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地図という「システム」を逃れ、未知の山脈に入る 『地図なき山』書評

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『地図なき山 日高山脈49日漂泊行』角幡唯介 著
地図なき山 日高山脈49日漂泊行(角幡唯介 著/新潮社/2310円/288ページ)
[著者プロフィル]角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)/極夜の北極探検など独創的な活動を行う探検家・作家。1976年北海道出身。『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』で開高健ノンフィクション賞・大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した。

地球の果てにも短時間で到達できるようになったのは、航空機などの輸送手段の発達が大きい。1990〜2000年代は、次第に未踏の地の喪失が進み、冒険が息絶えつつある時代に当たっていた、と著者はいう。そんな時代に探検や冒険の世界で生きていこうと決めた著者が欲したのは、情報化と消費経済が過度に進んだ「システム」の外側へ飛び出すことだった。

システムの外を「無秩序なカオス」と捉え、未知の世界を手探りで進む非効率の対価に自由を求めた。実践したのが、地図というシステムを放棄して行う「地図なし登山」だ。人類がアフリカから世界に広がり、地図のない世界を切り開いていったプロセスを追うように、広い山域、著者自身にとって完全に未知の北海道・日高山脈へ。17年夏から足掛け6年におよぶ登山の記録を綴(つづ)った。

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