"M-1"1点差で4位に「エバース」の大躍進の裏側 「桜の木の下」ネタが話題、実は苦労人の一面も

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コンビの力関係は、佐々木が100に対して町田が0。同居生活をしていた時期は、部屋の掃除や洗濯など生活全般の家事を町田が担い、佐々木はひたすらネタを書いていたという。賞レースで優勝した場合の取り分も「19対1」に決め、『NHK新人お笑い大賞』の賞金50万円のうち、町田は2万5000円だけを受け取ったという。

もちろんコンビ間での事情があってのことだろうが、そんな町田のキャラは「粗品のロケ」のYouTube動画(2024年1月31日配信回)でも垣間見えた。今年1月には、『チャンスの時間』(ABEMATV)にも出演。町田がバラエティーで活躍する日はそう遠くないかもしれない。

M-1に求められるカリスマ性

「平場で(筆者注:キャラが)下りてない人は、ネタにカリスマ性があんのよ。だから、(筆者注:令和ロマンは)M-1に出るこの2年の間だけテレビに出まくってないのよ。それがやっぱりちゃんと下りたり、『イジられて腹見せる』をやんなかったからネタにカリスマ性があるままいけたんだよね、真空ジェシカと令和ロマンは」<YouTubeチャンネル「BSノブロック~新橋ヘロヘロ団~」の動画(2025年1月6日配信回)より>

これは、テレビプロデューサー・佐久間宣行が、2024年のM-1決勝を振り返る中で語った言葉だ。

一度でもテレビやYouTubeにネタを出せばウケづらくなる時代、さらにバラエティーで別の魅力が開花するほど作りものである漫才のキャラは嘘っぽく見えていく。まさに現代の若手芸人が抱えるジレンマだろう。

一方で、吉本興業所属の芸人を中心に、あくまでもネタを重要視し、劇場出演や単独ライブを継続していきたいと考える若手も増えている。こちらもメディア露出と劇場のバランスを見ながら、カリスマ性が失われないよう活動している印象が強い。大手メディアの弱体化が明るみとなった昨今、そんな芸人が増えるのは必然だったのかもしれない。

大衆的な「お笑い」というジャンルではあるものの、その世界に生きる芸人は増加、多様化し、見る側もまた見たいものを選べるようになった。その中、いまだ絶大な注目度を誇るM-1決勝に進出した若手は、多くの選択肢から“各々が考える最適解”の道筋をたどっていく必要があるのだろう。

そんなお笑い界で、今年もエバースはM-1ファイナリストの切符を手に入れることができるのか。今後の活動に注目したい。

鈴木 旭 ライター/お笑い研究家

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Akira Suzuki

2001年から東京を拠点にエモーショナル・ハードコア/ポストロックバンドのギターとして3年半活動。脱退後、制作会社で放送作家、個人で芸人コンビとの合同コント制作、トークライブのサポート、ネットラジオの構成・編集などの経験を経てライターに転向。現在、『withnews』『文春オンライン』『現代ビジネス』『FRIDAYデジタル』といったウェブ媒体、『週刊プレイボーイ』(集英社)などの紙媒体で記事執筆中。著書に著名人6名のインタビュー、番組スタッフの声、独自の考察をまとめた『志村けん論』(朝日新聞出版)がある。

 

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