元「日比谷線車両」上毛電鉄でデビュー、なぜ実現? 運転台の仕様が異なり、試行運転を重ね習熟
橋本隆社長によると、最初に今回につながる話が出たのは今から3年前とのこと。「東京地下鉄(東京メトロ)から03系譲渡の打診があり、話が進んだ」という。
03系から改造を完了した800形車両の回送については、「改造工事を受注したメトロ車両が東京地下鉄・千住検車区構内で作業を行うことになり、東武鉄道と上毛電鉄の間で渡り線が現存していたことから、東京地下鉄、東武鉄道、メトロ車両、上毛電鉄が協議を重ね、各社の協力を得て、鉄路での甲種輸送(他社線を使って車両を輸送する)を実施した」とのことだ。
2023年12月9日の終電後、東京地下鉄千住検車区(南千住)から日比谷線と東武線の北越谷までは、自力で走行(回送)を行った(竹ノ塚駅の高架化が完了し、踏切や保安装置への誤作動の懸念がなくなったため)。北越谷から館林まで東武鉄道800型が牽引した。
翌10日の終電後にも館林から赤城まで東武鉄道800型が牽引輸送した。赤城からは上毛電鉄に入り、大胡までは上毛電鉄の700形が牽引した。大胡駅構内の入れ替えは、デハ101形が牽引した。年明けの2024年1月からは、ブレーキ性能の試験・誘導障害の試験(鉄道車両が鉄道信号装置などに、影響を与えないことを確認する試験)等、各種試験を実施した。
マスコンの仕様が異なる
事業者にとっては、近年のバリアフリー化をスタンダードとする声が多くなり、同社でも800形の導入に伴い、車いす・ベビーカースペースの採用や、扉上にある車内表示器の導入、車内セキュリティ・カメラも設置されており、旅客サービスも向上している。
なお、従来の車両の運転では、マスコン(車両の速度を制御する装置)とブレーキが独立したツーハンドルマスコン方式の運転方法であったが、800形では加減速が一体となった「T」字型のワンハンドルマスコンが採用されている。そのため、「長年ツーハンドルで運転してきているため、ワンハンドルが初採用になったことで、運転上の戸惑いがあると考え、乗務員の習熟には特に力を入れた。何度も繰り返し習熟運転を行うことで、クリアした」。
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