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イスラム暦「ラマダン月」が試練となるイスラエル 人質解放交渉は水面下で行われ、平和の時は戻るか

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実際にイスラエル治安当局がどのような対処をするのか不透明な部分も多いが、基本的に神域への規制を行なわないとしたイスラエル政府の決定の背後には、2つの要因が考えられる。

1つは、神域への入場規制という「異例の処置」を行なうことで、イスラム世界の反感を買ってしまう恐れである。治安維持の観点から、逆に規制しないほうが安全だと判断したのだろう。

そしてもう1つは、今の戦争はハマスに向けてであって、イスラム教徒に対してではないというメッセージを発信するためである。いずれも政治的な判断と言える。

平和なラマダン月を過ごせるか

ではラマダン月は何事もなく平和に終わるのかと言えば、それはわからない。2月下旬、ハマスのハニヤ政治局長は「ラマダン第1日目からアルアクサ・モスクに詣でるよう、エルサレムと西岸地区、占領地区に住む我らの民に呼びかける」と演説した。

これはイスラエル当局が神域への入場規制を検討しているという当初の発表を受けての呼びかけである。

入場に際して問題が発生し、イスラエルの治安部隊がイスラム教徒を制圧する様子が世界に発信されれば、ハマスにとっては都合が良い。イスラム世界に向けて、反イスラエル運動を呼びかける機会となるからだ。イスラエルがアルアクサを占拠し、われわれの聖所が危険にさらされている、と。

「アルアクサが危険にさらされている」という政治スローガンは、古くから用いられてきた。1929年には、岩のドームが破壊されているような偽造写真が流布され、大きな暴動に発展した。これはラマダン期間中ではなかったが、ユダヤ人百数十名が殺害された。

2023年10月7日の攻撃を、ハマスは「アルアクサの洪水」作戦と命名していることにも注目すべきだろう。イスラエルの治安当局は、特にエルサレムでは最大限の厳戒態勢を敷くと予測される。

ガザ地区ではハマスとの戦いが今も続いており、北部ではヒズボラのミサイル攻撃が激化している。

日本ではあまり報道されることがないが、ガザ地区周辺の居住区に住むイスラエル人や北部の町々の住民は、一時的に各地のホテルやキブツ(集団農場)のゲストハウスなどに避難している。ガザ地区周辺の居住区には少しずつ人が戻り始めているが、北部では6万人以上の住民が今も避難生活を余儀なくされている。

イスラエルにとって、とくに2024年のラマダンは試練の1カ月となりそうである。

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