イアン･ブレマー｢殲滅戦が新抵抗勢力を生む｣ ガザ軍事衝突､ウクライナ戦争､米中対立……

これから顕在化するリスクとは。

イアン・ブレマー（Ian Bremmer）／国際政治学者。1994年、米スタンフォード大学で博士号取得。25歳で同大フーバー研究所の最年少研究員。98年にシンクタンクのユーラシアグループ設立。毎年発表の「世界10大リスク」に定評。『「Gゼロ」後の世界』など著書多数

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世界の地政学リスクは、かつてないほど高まっている。米中対立、ロシアによるウクライナ侵攻、パレスチナ自治区ガザ地区での軍事衝突──。しかも2024年に控える米国大統領選挙の結果で、情勢は大きく変わる可能性がある。これから顕在化するリスクとは。国際政治学者のイアン・ブレマー氏に話を聞いた。

──イスラム組織・ハマスとイスラエルの軍事衝突は、深刻な状況が続いています。この戦争が終結に向かう条件とは。

イスラエル側はハマスを殲滅して、そのあとガザを完全に支配するつもりだ。これはパレスチナの支配権がゼロになるということ。その環境で戦争をどうやって終結させるかはわからないが、このテロリストグループに対する残酷なキャンペーンをイスラエル側がやめる状況からはまだ遠いだろう。

ハマスはさらにラジカルに

ガザの南部には、3～4万人のハマス戦闘員がいる。イスラエル軍はガザ北部から南部での戦闘に移行し、ハマス戦闘員のみならず民間人も大量に殺害して彼らのコミュニティーを破壊する。するとハマスはさらにラジカルになるだろう。

歴史を振り返ると、かつてイラク戦争で米国がサダム・フセインとバアス党を打ち負かしたとき、多くのダメージを与えた一方、それがイスラム国を生んだ。イスラエルがPLO（パレスチナ解放機構）をレバノンから排除したとき、ヒズボラが生まれた。つまり、イスラエルがハマスを打ち負かしても新しい組織が生まれるだけで、争いは終わらない。これは思想に対する戦争は不可能であることを意味している。