オンライン学習を「三日坊主」で終わらせない秘訣 継続と定着を促し「知の体力」を養う仕掛けとは
約8割の社会人が「学習の継続・定着」に不安
VUCAと呼ばれる今、DXやGXといった変革を次々に実践していくには、継続的なリスキリングが不可欠だ。日本はリスキリングが遅れているとされてきたが、三菱総合研究所(以下、三菱総研)の主席研究員で、人材分野の政策提言活動とソリューション提供を担当する奥村隆一氏は「追い風の要素が出てきた」と話す。
「良質なオンライン学習コンテンツが増え、
他方で課題も顕在化してきた。三菱総研が2022年4月に実施した調査によれば、仕事のレベルアップを目的に自己学習をしているビジネスパーソンの8割近くが、「学習の継続」や「学習内容の定着」のどちらか一方、もしくは両方に課題を感じていることが明らかとなったのだ。オンラインシフトで学びやすい環境が整っている中で、なぜそうした課題が顕在化しているのか。奥村氏は次のように分析する。
「オンライン学習の最大の強みは、簡単に始められることです。しかし、学びへのハードルが低い分、簡単にやめやすいという特徴があります。また、音声と動画での学びは受け身になりがちで、内容が定着しにくい欠点もあります。内容理解が不十分なために学習効果を実感できなかったり、新たに芽生えた疑問や問題認識に応えるコンテンツが見つけられなかったりすれば次の学びへの意欲も湧きにくくなり、三日坊主に終わってしまいます」
もともと三菱総研は、事業構造や市場の変化に伴う「職のミスマッチ」が大規模に起こる可能性を見据え、人材流動化を促進する「FLAPサイクル」を提唱。FLAPは「知る(Find)」「学ぶ(Learn)」「行動する(Act)」「活躍する(Perform)」の頭文字だが、とりわけ「学ぶ(Learn)」でつまずくビジネスパーソンが多いと見ていた奥村氏は、「継続と定着」のサイクルを促す仕掛けづくりの必要性を痛感。学び続けるビジネスパーソンをサポートする独自の学習支援システムの開発に着手した。
「三菱総研は、シンクタンクとして社会人教育・社会人学習の研究に長年取り組んできました。その成果をすべて棚卸ししてMRI(三菱総研)版学習支援システムを開発しました」
KDDI「リベラルアーツプログラム」とコラボした訳
このシステムは、具体的にどんなオンライン学習を実現するのか。それを体験できる実証実験が始まっている。第1弾として2023年3月31日から5月31日の2カ月間にわたって実施するのが、KDDIが展開する「リベラルアーツプログラム for Business」とのコラボレーションだ。
「リベラルアーツプログラム for Business」は、独立研究者で多数の著作を持つ山口周氏がアドバイザーを務めるビジネスパーソン向けVOD講座。KDDIが掲げる、5G通信を軸に社会に貢献する「サテライトグロース戦略」の一環として、世界中いつでもどこでもビジネスパーソンが学べる環境を提供すべく立ち上げたものだ。その特徴について、KDDI 教育事業推進部 戦略グループ グループリーダーの金子大輔氏はこう話す。
「リベラルアーツは昔からある概念ですが、このプログラムで提供しているものはすべて、『今のビジネスパーソン向け』に制作したオリジナル講座です。山口周氏をはじめ、各界の『知のフロントランナー』が講師として集まっており、それを数々の教養番組をつくってきたNHKエンタープライズ社が高品質な映像に仕上げています。多忙なビジネスパーソンが隙間時間に視聴しやすいよう『20分×3本』で1シリーズにしているのも特徴です」
22年9月にサービス提供を開始し、毎月5~10名の新規講師を増やすなど、ラインナップは充実の一途をたどっている。しかし、金子氏は映像の配信だけで満足はしていなかった。むしろ、奥村氏と同様に「継続と定着」に課題を感じていたと明かす。
「継続と定着に加え、リベラルアーツという幅広い教養を学ぶわけですから、つねに関心を広げていくことも重要です。私自身、ビジネスと関係なさそうな文化人類学やゲノム研究などの講座で、意外な気づきを得ることが多くあります。しかし、ニュースやECサイト、SNSのタイムラインといったデジタルコンテンツは、自らの関心に近いものが表示されるので、なかなか関心の幅を広げるのが難しいといった側面があります」(金子氏)
そこで、社会やビジネスに深い知見を持つ専門家の意見を聞こうということになり、政策提言やソリューション提供を行っている三菱総研へアプローチしたと金子氏は振り返る。当初は意見交換の形だったが、三菱総研が自らリスクを負って独自の学習支援システムの開発に取り組んでいることを知り、一気に実証実験の話が具体化した。
「忙しいビジネスパーソンに、限られた時間内でできるだけ濃密な学びをバランスよく提供し、多くの示唆や気づきを得てもらいたい。このシステムにはそれを強力にアシストする機能が搭載されていると確信しました」(金子氏)
自己変革の基盤として機能するシステム
金子氏の言葉どおり、MRI版学習支援システムは学び続けるビジネスパーソンを効果的に支援する設計となっている。機能は大きく3つだ。
まずは、学びとの出会いをつくり出す「パーソナル・レコメンド」。独自開発したAIが興味関心を把握し、志向性を深めたり広げたりするコンテンツをレコメンド。本人にとって学習の「ロールモデル」となりうる人の候補や彼らの学習履歴も提示する。学習のきっかけをつかめない、次に何を学べばよいか悩んでいるといった課題を解決し、継続的な学びを実現する。
次に、「ナレッジ・アンカリング」は考えを整理し、学んで得た気づきをいつでも参照できる「知のストックと活用」を促す機能だ。複数のメモをまとめてノートに仕上げたり、ノートから行動目標を立てたりといったこともできる。「読書のときに線を引いたり、メモを書き込んだりする行為をオンライン学習に落とし込みたいというのが発想の原点」と開発に携わった三菱総研の奥村氏が明かすが、デジタルツールだけに、手書きのメモをまとめるよりも迅速かつ効率的に「知の構造化」が実現する。
「そうやって構造化することで記憶にも定着しやすくなりますし、タグを付けておけばあとからキーワード検索もできます。また、動画をワンシーンごとにクリップできる機能も搭載していますので、重要な所だけ効率的に振り返ることも可能です」(奥村氏)
最後は「コミュニティ」だ。同じコンテンツを視聴する他の学習仲間と接することができる。違った見方を知ることで自分の考えを整理し、深い理解にもつながり、学習の継続と定着の双方にプラスの効果が期待される。
「自己学習はどうしても孤独です。自分だけで取り組むから続きにくい側面もあります。一方、学んだ内容を発信したり他の学習仲間の考えに触れたりすることで、継続を後押しするとともに、思考を広げるきっかけにもなると考えています。今後もKDDIさんをはじめ、さまざまな企業と連携してビジネスパーソンの学びにイノベーションを起こしていきます」(奥村氏)
意欲が長続きしない「三日坊主」の体質を改善し、予測不可能な時代だからこそ価値を発揮する「学びグセ」がつき、「知の体力」が強化され思考も大きく広がる――。こうした自己変革・自己成長のプラットフォームとしての役割を果たすシステムというわけだ。そこで学び、「継続と定着」が高まることで、必然的に「リベラルアーツプログラム for Business」をはじめとするオンライン学習コンテンツの価値もさらに向上するだろう。
期間:3/31-5/31
割引金額:1650円(税込)
※通常3300円(税込)のところ、半額