景気か金利か、米株式の不透明感一段と強まる 深刻な景気鈍化みられず消費者物価も高止まり

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なお底堅い米景気を受けインフレとの闘い強化を金融当局に求める圧力が再び高まる中で、ウォール街の専門家は米国株について再考を迫られている。 

悩ましい内容となった14日発表の米消費者物価指数(CPI)を踏まえ、債券投資家は政策金利が5%を超えてその水準にとどまるとの見方を強めた。年内の利下げ予想がほぼ消滅し、米2年債利回りは再び急上昇した。わずか数週間前に台頭したハト派的な見方から一転した。

株式については不透明感が非常に強い。強気派と弱気派は、1月に50万人余りの雇用を創出するほど急速に拡大した景気と金利上昇のどちらを重視すべきかを巡り論争を繰り広げている。14日の市場ではS&P500種株価指数がいったん上昇した後に下落に転じ、また上げるという展開をたどり、対立する見方をそれぞれ反映する形となった。トレーダーは、深刻な景気鈍化がほとんど見られない最近の経済や企業決算データと、高止まりする消費者物価を比較検討している。

バークレイズのストラテジストは金融当局がより長期にわたって景気抑制的な政策を推進する一方で経済成長が持続するという、「ノーランディング」のシナリオを想定する。同行は米国の成長率とインフレ率の両方について予想を引き上げた。

同行のストラテジスト、エマニュエル・コー氏は「市場予想はハードランディングからソフトランディングに変わり、今ではノーランディングに転じた様子だ。これは底堅い成長とインフレ率がより高く、より長く続くという構図で、株式にはやや追い風だ」と指摘。「この意味で14日のCPIは現状維持だ」と論じた。

  

年明け後の米国株上昇は今月に入り停滞しているが、市場が明確なシグナルを発しているとは言いがたい。1月に株式に対して明るい見方を示していたストラテジストは今、大きな売り攻勢もさほど心配していないが、相場の一段高も見通しにくいとの見方を示唆している。

モルガン・スタンレーはより景気抑制的な政策の道筋を想定し、米国債の投資判断を「中立」と、従来の「オーバーウエート」から修正。また、投資家が差し迫った政策転換の予想を後退させてドルのショートポジションを縮小すると予想した。

同行のストラテジストは「市場の議論は金利に対する経済の敏感さと中立金利が従来の想定より高くなるかどうかに移る可能性が高い」と分析した。

原題:Wall Street Games Out a ‘No Landing’ in Era of Stock Turbulence(抜粋)

--取材協力:、、.

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著者:Eva Szalay、Denitsa Tsekova

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