「働きがいと働きやすさ」を2軸で捉える効果 組織の状況を的確に捉え「対話のきっかけに」

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DXの拡大に伴って、活況を呈しているIT業界。中でも力強く成長しているのが、JSOLだ。2022年3月期の売り上げ・利益とも好調で飛躍を遂げている。その背景にあるのは、同社が16年ごろから「働きがい」と「働きやすさ」を2軸で捉えさまざまな施策を行ってきた点が挙げられる。さらには社員エンゲージメントを突き詰めて、「社員エクスペリエンス」の向上を目指すという。進化を続ける取り組みの最前線を追った。

「社員の働きがい=エンゲージメント」と定義

JSOLは発足当初より「働きがい」や「働きやすさ」の向上に取り組んでいたが、2016年の中期経営企画から社員エンゲージメントを起点にした成長戦略を盛り込んだ。近年、SIer業界はDX需要の高まりを受けて人手不足が明確になりつつあるが、それが表面化するずっと前から、同社は社員エンゲージメント向上に取り組んでいた。その理由を、同社代表取締役専務執行役員の名倉明彦氏は次のように語る。

「経営において、最も重要な資産は人財です。社員が働きがいを感じながら安心して働くことができなければ、企業が持続的に成長することはできません。一口に働きがいといってもさまざまな定義がありますが、JSOLでは以前の中期経営計画で働きがいを『社員エンゲージメント』と定義。社員エンゲージメントとは具体的に、『社員が組織や仕事に対して自発的な貢献意欲を持ち、主体的に取り組めている状態』を指します。ただ、全員がそれぞれ違う方向に動くと、組織が機能不全に陥って成果を出せなくなり、結果的に働きがいを感じにくくなってしまう。会社の経営理念や行動指針と社員の思いが重なったときに、社員エンゲージメントが生まれるのです」

JSOL 代表取締役専務執行役員 名倉 明彦氏
代表取締役専務執行役員
名倉 明彦

では、どうすれば社員エンゲージメントを高めることができるのか。同社が重視するのは「対話」である。「経営層が方向性を『発信する』だけでは足りません。双方向で『対話』をしながら理解を深め、社員が納得した形で進めないとエンゲージメントは高まらないと考えています。もちろん双方向ですから、現場の声を吸い上げて具体的な施策に仕上げていく。その過程でメンバーの個性が表れ、多様性も育まれるという考えです」

各階層で展開される「対話」の取り組み

JSOLが働きがい向上のために行っている「対話」の仕組みは複数ある。例えば2022年度には、名倉氏は社長の永井健志氏と共に、全部長層を対象に対話会を実施。1回につき4~5人の管理職が参加して、2時間程度話し合う。来期以降は課長層とも対話を行う予定だ。

対話の組み合わせは「経営層と管理職」にとどまらない。「Welcomeサロン」では、名倉氏がキャリア入社者を対象に1時間半のランチミーティングを実施。また管理職は一般社員と年4回の定期面談に加え、部門により定期的に1on1を行っている。さらに各本部の取り組み例としては、社員が困っていることや今後のキャリア、プロジェクトの希望などを記入するアンケート「Willシート」、マネジメント同士やメンバー同士で行う対話会「月一縁側」や、部長とメンバーの交流を行う「部長縁側」、社員同士で感謝を伝える「サンクスカード」といった取り組みが行われている。

これらの施策はやって終わりではない。活動の成果は年に1回のサーベイで定点観測ができていたが、より小さな組織単位で機動的かつ対話のきっかけとなるように、エンゲージメントサーベイを導入。社員の負荷が少ない月1回の調査にすることでリアルタイムに推移変化を把握している。結果を基に他部門との比較や施策の推奨案まで提示することで、さらなる働きがい向上を狙っているという。

社員が会社の取り組みに感動

2軸のもう1つ、「働きやすさ」の軸でも成果を上げている。例えば男性社員の育児休業取得率は、2018年に35%だったが、21年には68%と倍近くの伸びを示している。

ほかにも、22年12月に社長の永井氏など計13人(うち男性7人)が「女性の健康経営推進員」の認定を取得。性的マイノリティーに関する取り組みの評価指標「PRIDE指標」では、同指標で最高位のゴールドを2年連続で獲得するなど、外部から高く評価されている。

この「PRIDE指標」に応募した経緯が興味深い。JSOLではこの数年、性的マイノリティーが働きやすい環境整備を進めてきた。その中にはある社員から「職場でこんなことに困った」との相談を受け、会社側が解決に向けて即時に動いた事例もあった。

「その社員が、『多様性への理解が深く、すばらしい職場環境。JSOLをもっと広く知ってもらいたい』と応募を提案したのが始まりです。社員が会社の取り組みを高く評価してくれたことが何よりうれしく、多様な社員が活躍できる土壌を整えてきた努力が大きく実ったと感じています」

社員エンゲージメントから社員エクスペリエンスへ

これら一連の取り組みが認められ、JSOLは2020年度の経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選」にも選出された。

代表取締役専務執行役員 名倉 明彦

「“ダイバーシティ経営”という名称からわかるように、多様性がビジネスの成果に結び付いているかという点が選定のポイントでした。当社が選ばれたのは、成果へのつながりを評価されたからであり、そこにこそ真価があると考えています。具体的な成果としては、さまざまな社内外のプレーヤーと共にソーシャルビジネスの創出を目指す『一般社団法人社会デザイン・ビジネスラボ』への参画や理化学研究所が初めてベンチャー出資を行い共同設立した『理研数理』があります。今後もダイバーシティを推進し、成果につなげていきます。

現在、社員エンゲージメントのさらに上の概念として“社員エクスペリエンス”を追求し、当社の強みとしていく戦略を立てています。このテーマは奥が深く、明確なゴールはありません。今後も進化させて、社員はもちろんすべてのステークホルダーにとって、もっと魅力的な会社にしていきます」と、名倉氏は将来を見据える。

「働きやすさ」と「働きがい」の2軸を向上させ、かつビジネスの成果に結び付けているJSOL。ゴールのない挑戦は、これからも続いていく。

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