2022年9月、AI型教材「Qubena」が学習eポータルとしてサービス提供開始

MEXCBTは、国や地方自治体などが作成した問題データを格納するCBTシステムだ。GIGAスクール構想の進展に伴って、子どもたちの学校や家庭における学びを保障するために開発・展開されている。

来年度の全国学力・学習状況調査の一部がMEXCBTで実施されることが決まり、全国の自治体ではその入り口となる「学習eポータル」と呼ばれるプラットフォームの導入が進められている。

COMPASS 取締役 木川俊哉氏

まずは学習eポータルを導入し、スムーズにMEXCBTを利用することはもちろん重要だが、その先に見据えるべき、学習eポータルの本質的な価値、学びの環境の変化とは何だろうか。

木川俊哉氏は「アカウント管理やシングルサインオン、教育委員会での運用のしやすさなど表面的な利便性を重視した機能を備えていることは、もちろん重要です。ただ、本来、学習eポータルを導入してMEXCBTやほかのサービスと連携するということは、それらにとどまらない、子どもたちの学びの環境全体をアップデートできるものだと考えています」と語る。

COMPASSはこれまでAI型教材「Qubena」を開発提供してきたが、2022年9月からMEXCBTと連携し、学習eポータルとしてのサービスを提供開始した。「Qubena」が学習eポータルとして実現しようとしている世界とはどんなものなのか、その全体像をひもといていく。

AI解析で一人ひとりに個別最適な学びをかなえる

そもそもAI型教材「Qubena」は、小中学校の主要5教科について、AIが子どもたち一人ひとりの理解度を解析し、習熟度に応じて適切な問題を出し分けることのできるアダプティブラーニング教材だ。

今ほどAI型教材が注目されていなかった2014年から開発に着手し、今では全国2300以上の公立・私立の小中学校に導入され、100万人の子どもたちがQubenaで学習。「公立中学校の中には、従来の授業時間を2分の1に圧縮するなどの効果を上げているケースもあります」と木川氏は続ける。

「例えば、分数の足し算・割り算が混在した計算問題は、一見簡単そうですが、間違え方はさまざまです。『割り算を理解できていない』『計算の順序に迷ってしまう』などつまずきの原因をAIが特定し、克服するべき問題を導き出して出題します。場合によっては、過去の単元や分野にさかのぼって出題することもあります」

すでに8年以上にわたって開発・提供してきた経験から、実際に子どもたちに解かれ蓄積されてきた膨大なデータとそこから導き出されるバリエーション豊かな問題がAI解析の精度にも好影響を与えているようだ。

「22年9月時点では約6万7000問を搭載しています。21年度は、年間5億件の解答数を突破しました。直近では1日約500万件が解かれており、毎年圧倒的な量の学習データが蓄積されています。データを分析しても、克服に必要な問題が不足していると適切な問題を出題できないので、日々問題を改修・リニューアル・追加しています。23年度には、約8万3000問までアップデートする予定です」

自社で教材を開発してきたからこそ実現できる、学習eポータル

子どもたち一人ひとりに「個別最適な学び」のための学習データ利活用を、さらに一歩先へ進めるため、今回、QubenaはMEXCBTと連携。学習eポータルとして、子どもたちを主体とした横断的なデータ利活用を推し進めていく。

「ポータルとしての表面的な連携にとどまらず、子どもたちの日々の学習データを軸とした活用のための開発を進めています。それが実現できるのは、Qubenaが2022年9月現在、唯一のデジタル教材を提供する会社による学習eポータル(同社調べ)だからです」

MEXCBTとの連携においても、学習とテスト結果の相関関係を把握したり、解答結果から苦手な分野を分析したり、子どもたち自身がデータを活用しながら弱点を克服していくことができる、そんな子どもたちが主体のデータ利活用に向けた開発が進められている。

「テストは日々の学習の延長線上にあるもの。だからQubenaとMEXCBTのデータを連携することで、子どもたちの学びが途切れることなく続いていくサイクルを実現したいですね。さまざまなサービスをつなぐ学習eポータルの役割は、子どもたちを中心にサービスの垣根を越えた連続的な学びを担保すること、また横断的なデータの利活用により子どもたちの主体性を最大限引き出すことにあると考えています」

さらに今後、デジタル教科書やほかのデジタル教材の普及が見込まれる中で、2023年度以降はQubenaとデジタル教科書、教材を連携させることでよりシームレスな学習を実現する機能も拡充予定だ。

「教科書で例題を解いた後に、同じ単元の応用問題をQubenaで解いたり、逆にQubenaで間違えた問題について『教科書のここを読んでみよう』と閲覧をサジェストしたりと、新たな学習体験を創出できるでしょう」

また、校務の効率化や適切な評価プロセスの実現を目指す各種システムについても、Qubenaとの連携を実現する。

「教育委員会や学校現場においては、さまざまなシステムの導入により、アカウントが増え続けて管理が大変な状況だと思います。Qubenaでは、そうした負担の軽減につなげるため、校務支援システムとの連携にもいち早く対応しています」

例えば、統合型校務支援システム「EDUCOMマネージャーC4th」との名簿連携では、個別対応していた年度更新作業の一元化を可能に。国際標準規格「OneRoster」への対応も予定しているので、同規格に対応する校務支援システムとも連携できるようになる。ほかにも、スクール・コミュニケーション・プラットフォーム+校務支援システム「ツムギノ(tsumugino)」との連携では、評価プロセスへ日々の学習データを反映することによる客観的な評価基準の設計にも取り組んでいる。

子どもたちの学びの環境全体をアップデートする学習eポータルを目指して

子どもたちの主体的な学びのためのデータ利活用。そして、教職員が「校務」を効率化して子どもたちと向き合う時間を増やすためにも学習eポータルとしてのQubenaへの期待が集まる。そのうえで、今後の展望について木川氏はこう語る。

「現在、子どもたちの学習データはサービスごとに閉じた状態でバラバラに管理されています。しかし、本来なら学習データは起点となる子どもたち本人を中心に、事業者・サービスの垣根を越えて、オープンに連携・利活用されていくべきだと考えます。Qubenaのデータを外部のデータと組み合わせたり連携させたりすることで、子どもたちや教育委員会・先生方にとって、もっと価値を生み出せると考えます。さらに、そのデータを子どもたち自身も必要に応じて利用できるようにすることで、より主体的な学びを引き出すことにつなげていきたいのです」

利用者である教育委員会、学校、そして子どもたちの要望に応じ「Qubena」のデータをオープンにしていくことで、大学などの研究機関で学習データを分析して教育施策に活用できる。それだけでなく、学校と学習塾でそれぞれ学んだデータを一元管理することで、一人ひとりに個別最適な学びにつなげることも可能だ。

「便利で効果的であることに加え、データのオープンな利活用に当たってはその安全性が非常に重要です。システム的な安全性と法令の観点にも留意しながら、学習者である子どもたち自身を中心とした横断的なデータ利活用の環境を、学習eポータルとして目指していきます」

AI型教材との相乗効果で子どもたち自身が主体となる「個別最適」な学習機会の提供を可能にするだけではなく、教職員の働き方改革を後押しする可能性も秘めている。教育現場のデータ利活用、そしてQubenaがどのように進化をしていくのか、その動向に注目だ。

ちなみに、COMPASSでは全国の自治体における学習eポータルの導入を支援するため学習eポータル+AI型教材「Qubena」の無償提供を新規導入自治体を対象に2024年3月末までの期間実施している。詳細はオンラインで開催されている説明会への参加を。

>学習eポータル+AI型教材「Qubena」の詳細を見る

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