推薦者|山猫総合研究所 代表 三浦瑠麗

バイデン政権誕生後も米中対立の基本は変わらない。現状維持のオバマ政権の後、トランプ政権によって、米中対立は激化した。その動きが引き戻されることはない。バイデン氏はコンセンサスを重視し、党のエリート的な意見に従う。それは時代の趨勢を踏まえたものであるし、共和党ともある程度近しいものになる。
ただバイデン政権はエスカレートした政権からの現状維持で、その土台はオバマ政権とは違う。中国側は対話を模索しつつも、裏では米国を本質的な脅威とみて、覇権の掘り崩しを狙う。プロレス的でどこかで折れるトランプ政権よりも、老練な現政権のほうが手ごわいと感じていると思う。
そうした米中対立の本質を知るための3冊を紹介したい。
トランプ政権誕生の背景から知ることが重要であり、『貿易戦争の政治経営学』が参考になる。自由貿易は正しいのだが、米国の国内政治的に見ると、国民が得だけでなく損をする負の効果も存在する。自由貿易への疑念をいっさい許さなかったアカデミズムの姿勢は間違っていたと主張する。
負の効果を中和する政策によって、自由貿易に対する賛意を得ていくのが正しい手法だろう。国家が経済を防衛する権利を認めることで、長期的にグローバリゼーションへの支持を取り付け、自由と豊かさを守ることができる。
この本はグローバリゼーションを守るためには人々の生活をしっかりと守らなければならない、と主張する。先進国でポピュリズムが台頭したのは、グローバリゼーションに対する反動である。既存のエリート政治が、人々の懸念に対応しなかった。その怒りをトランプ氏が吸い上げた。
通貨の歴史が示すこと
かつての大英帝国がいかにして帝国の座を手放したのか。そんな研究をしていたことがある。歴史的に見ると、新旧帝国は必ずしも大戦争を通じて覇権交代してきたわけではない。覇権戦争ではなく、旧帝国の自滅が一般的な衰退プロセスだ。衰退を招くのは経済。産業力、購買力の低下はやがて国家財政の破綻につながる。大英帝国はポンドの切り下げをきっかけにスエズ以東から撤退する。
『とてつもない特権』の著者は通貨や金融などの経済史の専門家で、さまざまなエピソードを描く。私の専門の戦争や外交も通貨や金融の側面からその本質が見えてくることがある。この本では何百年単位での覇権の攻防が通貨の歴史を通じて浮かび上がってくる。世界の金融センターの座がロンドンからニューヨークに交代する過程が面白い。将来、中国もそんな交代劇の主役になれるのか。
『中国の行動原理』。これを理解すれば、米国人のミステイクも減る。中国がすべてにおいて、中央の指令で動いているというのは幻想だ。熾烈な競争に勝ち抜いたイニシアチブだけが国家の政策に取り込まれる。そんなプロセスを理解したい。日本は米中のメンタリティーや覇権交代の流れをより客観的に知る必要がある。






















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