「何とか今年度のうちに与信費用を積めないだろうか」。ある銀行の財務担当者は頭を抱えていた。与信費用とは、不良債権の処理にかかる費用や、貸し倒れの発生に備えた引当金のことだ。
この銀行は2020年度の予算を策定した際、与信費用の大幅な増加を見込んでいた。しかしその後、政府が無利子無担保融資をはじめとする資金繰り支援策を拡充。これが奏功して倒産は想定よりも少なく、与信費用も抑えられた。その結果、第3四半期を終えた時点で、通期の業績予想を上回る水準の利益となっている。
ただし、危機感は期初と変わっていない。「問題を先送りにしただけで、遠からぬうちに倒産企業が増える」というのがこの担当者の見立てだ。だからこそ、「利益に余裕のある今年度のうちに将来発生するであろう与信費用を引き当てておきたい」というのが本音なのだ。
とはいえ、理由もなく無制限に引当金を積むことはできない。「日々、監査法人が納得するようなやり方はないか模索している」という。
これはこの銀行に限った話ではない。メガバンクから地方銀行まで、多くの銀行が「予防的な引き当てを検討している」という。それだけ、将来の不良債権を恐れているのだ。
首都圏は3月ごろから
銀行員の多くは「3年後、5年後がヤマ場」と口をそろえる。無利子無担保融資の返済猶予期間が終わるからだ。その頃までに業績が回復しなければ返済のメドが立たず、倒産する企業が急増するとみているわけだ。
首都圏はもう少し早そうで、「21年3月ごろから徐々に倒産や廃業が出てくるのではないか」(財務担当者)という声が聞かれる。というのも、首都圏の企業を中心に1年の猶予期間で借りている企業が多く、すでに「おかわり」のタイミングにあるというのだ。
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