米ドルは名目実効レート(多通貨間での実力を測る指標)でみると、昨年5月半ば以降下落基調が続き、10%程度下落している。昨年1年間を通じて主要10通貨中、最も弱い通貨となった。
米ドル全体、つまり名目実効レートでみた米ドルの動き方には一定のパターンがある。もちろん、いつも同じパターンになるとは限らないし、長い期間では米国や他国の経済構造が大きく変わることによってパターンが変化する可能性もある。だが、過去20年間ぐらいは一定のパターンにおおむね沿っている。
それによると、米ドルが上昇するのは、次の2つの条件のうちどちらかが当てはまるときだ。
まず、世界的に株価が大きく下落するような、いわゆるリスクオフ(リスク回避)の環境にあるとき。世界経済が力強い成長を続け、投資が活発に行われるようなときには、米ドルから新興国などに投資資金が流れるため米ドルは売られる。だが、環境が一変して世界的に株価が下落し、先行き不透明感からリスク回避姿勢が強まると、投資資金の回収とともに米ドルは買い戻される。その際、円のほうがより買い戻されることもあるので、円高米ドル安になることが多く、円との比較ではわかりづらくなるが、その他の通貨に対しては米ドルが上昇している。
米ドルが強くなるもう1つの条件は、さらに2つの条件から成る。1つ目が米国経済の独り勝ち、2つ目がFRB(米連邦準備制度理事会)への利上げ期待がその他の中央銀行への利上げ期待よりも強いことだ。基本的にはこれら2つがともに当てはまるような状況になると米ドルは上昇する。
世界経済が好調なときは通常、前述のように米ドルから投資資金が他国に流れるため米ドルは売られるが、米国経済がその他の国に比して突出して強く、FRBへの利上げ期待が目立って強まると、米ドルは買われる傾向がある。このとき、円は弱い通貨となっているので、米ドル円相場は比較的力強く上昇し円安米ドル高となることが多い。
例えば、トランプ氏が大統領当選を決めた2016年11月にはこうした条件に合致して短期間であったが米ドルが上昇した。14年後半から15年初めまでと、18年後半の米ドル上昇局面はこれらの条件に当てはまっていた。
利上げ期待はまだない
米国経済の独り勝ち度合いを測るのはなかなか難しいが、米国製造業PMI(購買担当者景気指数)からグローバル製造業PMIの数字を引いた値でみると、4ポイント前後を上回ると米ドルが買われる傾向がある。現状この数値は3.3ポイントとなっており、米国経済の他国に先んじての回復がもう少し強まれば、米ドルの下落トレンドが止まり反転上昇を始めるための2つの条件のうち1つを満たすことになる。
もっとも、米ドル上昇のもう1つの条件である、FRBへの利上げ期待がとくに強いという点をクリアするのはまだ難しそうだ。先に示した米国経済の独り勝ちで米ドルが上昇した期間は、いずれもFRBの政策金利の変更期待を反映すると考えられる2年金利も上昇していた。現在、FRBの金融政策に関しては、証券購入の縮小期待もあって長期金利が上昇しているが、長期金利の上昇だけでは米ドルは買われない。この場合、為替リスクをヘッジして米債投資をしても比較的大きなリターンを得られるため、米ドルの支えにはならないのだ。この点に鑑みると、昨年5月からの米ドルの下落トレンドが終了し反発局面に入るのは、まだ難しいだろう。






















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