菅義偉首相は所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言した。前のめり気味の欧州、米国との差を明確にしたい中国に続き、ゼロエミッション化を進める日本の決意を内外に示すことに成功したといえる。
しかし、大変なのはこれからだ。ESG(環境・社会・企業統治)投資に向けた政府の後押しが加わったことで、日本も重い腰を上げるだろうが、さらにエンジンをかける必要がある。欧州ではすでに中央銀行や財務省がその中心にいて流れを加速させている。日本が目標を達成するための1つの参考になるのではないか。
中銀・財務省の役割
こうした動きを見るうえで、まず重要なのが中銀・金融監督当局の有志連合である金融当局ネットワーク・NGFSである。17年12月の気候変動サミットで設立され、気候変動リスクへの金融監督上の対応を検討するもの。設立から3年半で参加メンバーは創設時の8カ国から72カ国に増加。日本は金融庁と日銀がそれぞれ18年6月、19年11月に参加している。
NGFSは法的存在ではなく、拘束力を持たない。が、気候変動、ESGの考え方の指針を作っていくと考えられ、注目する必要がある。
具体的にいくつか事例を挙げると、次のとおりだ。中銀としてはオランダが初めて国連責任投資原則(PRI)に署名。19年3月には責任投資憲章を制定し、自身の資金や外貨準備の運用に適用している。また、フィンランド銀行の責任投資戦略は投資判断すべてに適用される。とくに債券投資では、国連グローバル・コンパクトを順守しない企業は除外、武器関連企業は投資対象でない、など厳格に基準を適用。フランス中銀も同様に責任投資戦略を年金債務などのポートフォリオに生かす。地球温暖化を2度に抑制する目標に即し、環境への配慮が乏しい企業はポートフォリオから外す。
ESG投資が潮流となる中、各国中銀は能動的なファイナンスで役割を果たしている。また監督する立場では、ストレステストにESGの視点を持ち込むことや公開市場操作のヘアカットにESG基準を統合することなどを進めている。
一方、国債発行市場においてグリーンボンドが増えていることも特徴的な動きである。ドイツがグリーン国債発行を9月に決めた。グリーン国債のフレームワークを見ると、この債券発行の目的は、投資家に投資妙味を提供するということ以上に、グリーン予算を中期的に透明化することにある。今般の資金調達分は輸送、国際協力、エネルギー、農業などに使用されるが、今後についても電気自動車普及のための補助金やエネルギー移行促進のための二酸化炭素回収・貯留技術など使い道は多い。これまで、ユーロ圏のグリーン国債は6銘柄。フランスを皮切りにベルギー、アイルランド、オランダなどが起債しているが、この動きはこれからも継続する見込みだ。
欧州の動きをそのままトレースする必要はない。しかし、中銀が能動的にサステイナブルファイナンスを実行し、かつ、それがほかの銀行を後押ししていることや、財政資金を効率的にグリーンプロジェクトと結び付ける試みは、日本でも採用を考える価値がある。ゼロエミッションに向けた覚悟を実際の施策に落とし込んでいく必要がある。目標設定後の具体案を、海外投資家が固唾をのんで待っていることを忘れないでほしい。






















無料会員登録はこちら
ログインはこちら