富士山麓に広がる遊園地・富士急ハイランド(山梨県富士吉田市)。毎日、昼下がりになると目立つのが中国人ツアー客の姿だ。隣接するバスターミナルに大型バスで続々と到着すると、絶叫マシン「FUJIYAMA」に家族で列を成す。チケット売り場や園内のレストランでは、中国のスマートフォン決済サービス「ウィーチャットペイ(微信支付)」ですいすいと支払いを済ませていく。
ハイランドの外国人客は入園者全体の1割程度。そのうち中国人の数は7〜8割と圧倒的だ。増え始めたきっかけは、2010年の上海事務所の開設だ。中国からの訪日客増加を見越して、現地の旅行会社に対し、ハイランドへ立ち寄るパックツアーを企画してもらうための営業を始めた。
営業活動に加えて、富士山や絶叫系アトラクションの中国人からの人気の高さが後押しとなり、富士登山とハイランドをセットとして旅程を組むツアーが急増。現在もツアーでの来園が中国人客の大半を占めるが、徐々に個人客も増えているという。
団体・個人ともに中国人の来園が伸び続けている裏には、ほかのテーマパークと比べた際の“来園のハードル”の低さもある。その1つが、冒頭の決済手段だ。
ハイランドを展開する富士急行は昨年2月以降、中国最大級のSNS・ウィーチャット(微信)を展開するテンセントとの提携の下、ハイランドなどグループ29施設をウィーチャットペイでの決済に全面的に対応できるようにした。ウィーチャット内でチケットを購入できるサービスも日本国内で初めて導入し、中国にいながらのフリーパス事前購入が可能に。富士急行の槙裕治執行役員は「国外旅行では(手続きなどの面で)不便さのある場所は敬遠されがち。中国国内でキャッシュレス化が進む中、中国人訪日客の需要をさらに取り込むには、彼らがストレスなく乗り物の搭乗や買い物を行える環境の整備が欠かせない」と語る。
入園無料で売り上げ増
さらに昨年7月には、開業以来初めて入園無料化に踏み切った。1500円の入園料を撤廃し、富士山周辺を訪れた人やアトラクションに乗らない観光客に対しても気軽な来園を促す戦略だ。
実際、無料化の効果は絶大だった。その後の入園者数は前年比で2桁伸長。アトラクション料金の値上げもあり、無料化前よりも売り上げは増えている。また昼食や休憩を取るスポットとしても認知され始め、地元・山梨の名物「ほうとう」などを出す園内のレストランは、中国人を筆頭に団体客の予約で満席の日も珍しくない。
無料化と同時に、入園時の顔写真撮影・登録を義務化するシステムを導入。各アトラクションの搭乗ゲートでは顔認証によりフリーパス保持者か否かが瞬時に判別され、入退場の手続きも効率化した。自動認証の導入は外国人客にとっても、再入場時などのスタッフとのやり取りが必要ないため、言語面での心理的負担を軽減できる。
富士急行は訪日客が来園しやすい環境づくりを進めて、周辺で運営するスキー場やホテルなどへの波及効果も狙う。ハイランドが放つ数々の奇手は、富士山を囲むエリア全体の活性化への強力な武器となりそうだ。






















無料会員登録はこちら
ログインはこちら