迫る新興国のデフォルト危機 先進国への飛び火に注意
アルゼンチンやトルコで起きつつある債務危機は、世界に飛び火することのない地域的な問題なのか。それとも、膨張した世界の債券市場が、米国の利上げによって一段と不安定になってきたことを示す警告なのか。
先進国でも、金利上昇によって安定が脅かされかねない国が出てきている。イタリアがそうだ。イタリアでは、過激なポピュリスト政権が有権者の支持を集めている。イタリアの経済規模はギリシャの10倍。そんな国がデフォルト(債務不履行)を引き起こせば、ユーロ圏経済は一気に吹き飛ぶ。
幸い、こうした巨大危機が火を噴く可能性はまだ低い。仮に危機が起きたとしても、IMF(国際通貨基金)には危機の第一波に対処するだけの十分な資金がある。
政局が騒がしくなってきているのに楽観的でいられる最大の理由は、世界の金利がいまだに超低水準にあることだ。米国が追加利上げするとの観測は広がっているが、30年物の米物価連動債の利回りは1%近辺にとどまっている。世界の金利見通しは落ち着いており、債券市場にデフォルトの大波が迫っているとは考えにくい。
しかし、一方で目を引くのは、IMFが警戒レベルを大きく引き上げていることだ。IMFはこれまで、巨額の債務に関して先進国は神経質になる必要はないというスタンスだった。ところがここにきて、近く景気後退が起きた場合には財政的に行き詰まる国が出てくるおそれがあると警告し始めている。財政が苦しくなる理由には、“隠れ債務”の問題もある。高齢化に伴う年金・医療・介護の財源不足は深刻であり、潜在的な公的債務が政府公表値を大幅に上回っている国は多い。
IMFの警告には膨大なデータの裏付けがある。大規模な経済的ショックに見舞われた場合、巨額の債務を抱えた国は経済成長率が極端に落ち込むことがわかっている。公的債務が大きいほど成長率は低くなるという長期的な負の相関関係が存在するのだ(データはもちろん、緊縮財政をやみくもに推奨するものではない)。
しかし、先進国に関していえば「今回は違う」「もはや過去の経験則は当てはまらないのだ」と考えている人は多い。こうした人たちに言わせれば、差し迫った危機もないのに財政や年金給付を引き締めるなど愚の骨頂ということになるのだろう。これは危険な発想だ。基軸通貨国として他国より財政的に有利な立場にある米国であっても危険なことに変わりはない。
深刻な経済危機は、どのような国であっても起こりうる。しかも、その原因は想定外のところに潜んでいる場合がある。金融危機だけではない。サイバー攻撃、疫病の世界的流行などのリスクは私たちの想像をはるかに超えている可能性が高い。だが、財政基盤のしっかりした国であれば、想定外の事態に陥ったとしても、より多くの策を講じることができる。
確かに、新興国債券の暴落は世界に飛び火しないというのが最有力のシナリオではある。だが、ここにきて債券市場に動揺が走っていることは、警告のサインと受け止めるべきだ。先進国も例外ではない。どんな経済大国であっても、今のような超低金利が永遠に続くことを当てにしてはならない。
先進国の国債は安泰だと言って私たちを安心させようとする経済学者は、一昔前に「大いなる安定」という言葉を掲げて、市場の安定は永続すると喧伝していた人たちに不気味なほどよく似ている(実際、同じ人物であることが多い)。しかし、その後、リーマンショックが起きたことからもわかるように、危機は必ず繰り返す。金融の世界にはまだ、「歴史の終わり」は訪れていないのである。






















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