民泊、始まった個人の撤退戦 民泊戦線異状あり
「2年間で約200万円の損失です」──。都内在住の50代男性は、そう言って肩を落とす。
この男性は最近大手金融機関を退職し、現在は不動産投資に専念している。民泊へはブームが過熱していた2016年4月に参戦。港区の1Kマンションの一室を、大家の許可を得て民泊物件として貸し出した。
売り上げは平均で月16万円。一方で家賃11万円、通信費と水道光熱費で2.5万円、問い合わせや予約業務を代行する業者への委託費が売上高の20%(3.2万円)など費用がかさんだ。
花見の季節や年末など黒字の時期もあったが、平均すると毎月1万円弱の赤字。転借期限である4月中旬に撤退を決めた。民泊での損失は、業者への手数料や家財道具など初期費用150万円、2年間の累積赤字約20万円、撤退費用など合わせて約200万円に達した。
6月15日に施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)。全国で民泊を解禁する一方で、年間宿泊を180日以下に制限し、都道府県への届け出を義務づける。今年3月から届け出の受け付けを開始した。
新法には健全な民泊サービスの普及を図る狙いがあるが、その施行を前に起きているのが、個人の“撤退戦”だ。現在は民泊物件のほとんどが違法状態。大半は、個人の不動産投資家が大家から部屋を借り、民泊に転用しているとみられる。
都内も稼働率は6割弱
ホテルや民泊業者向けにAIを使った収益管理システムを提供するメトロエンジンによれば、都内ですら稼働率は6割弱、客室単価は1万円前後にすぎない。平均収益は頭打ちで、大家からの転借費用や外部委託する清掃費の上昇もあり、「(部屋を貸し出す)ホストの大半は儲かっていない状況」と田中良介CEOは指摘する。全国約5万件ある民泊のうち、新法施行を境に「8割は消えてもおかしくない」(同)。

それに伴って撤退サービスが活況だ。民泊の運用代行や参入補助を手掛けるスイッチエンターテイメントは昨年2月、不用となった家財道具の処分を代行する民泊撤退サービス「撤退太郎」を開始。「これまで毎月20〜30件だったが、今後3カ月間は倍以上になるだろう」(川田雄大代表)。不用品の売買情報などを掲載するネット掲示板「ジモティー」には、撤退に伴う、一括売却の投稿が相次ぐ。
エアビーアンドビー日本法人は新法の説明会を実施するなど対応を進めるが、「新法に対応していない物件は非掲載になる」(長田英知執行役員)。不動産売買・賃貸ポータルサイトのSUUMOやANAホールディングスなどと提携し、次の合法的な民泊のあり方を模索している。
メトロエンジンの田中CEOは、新法施行後には「空き家を抱える不動産業者などが埋め合わせるように多数参入する」と予測する。個人の不動産投資家が退場した後の民泊はがらりと変わりそうだ。






















無料会員登録はこちら
ログインはこちら