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圧力の証拠を残すためか 森友「決裁文書」の謎

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森友学園をめぐる決裁文書を改ざんしていた財務省。その動機や改ざんを誰が命じたのかなど不明な点は多い。元官僚の古賀茂明氏に聞いた。

こが・しげあき●1955年生まれ。東大法卒。元経産官僚で内閣審議官として公務員制度改革にも携わる。2011年に退官。政官のあり方を厳しく問う著作多数。近著に『国家の共謀』。

──首相夫人の安倍昭恵氏や政治家に関連する記述が決裁文書から削除されていました。今回の決裁文書のように関係する人物の言動を細かく記述するものですか?

普通は書かない。長期間、保管される公文書には、今回問題となっているようなことは記述しない。通常ならば正式な文書でなく担当者の私的なメモ扱いにして表に出ないようにするだろう。首相夫人や政治家の介入があったと読めるような記述は避けようとする。ところが近畿財務局の担当者は決裁文書に事細かに記述していた。これは推測だが、現場レベルでは非常におかしいという意識があり、さまざまな圧力の証拠として記録に残そうとしたのではないか。

──近畿財務局には局長以下、キャリア(旧国家1種)の職員がいます。その職員たちも決裁文書をいったんは承認しています。

その事情はよくわからない。森友学園に国有地が格安で売却されることは認識していても、決裁文書に添付された「調書」の最終版を細かくはチェックしなかったのかもしれない。ともかく佐川宣寿・前国税庁長官(当時、理財局長)の国会答弁とつじつまを合わせる必要があって、改ざんに手を染めた。財務省本省と近畿財務局は、国有地売却が「昭恵案件」だと認識していたから特別な配慮をした。しかし首相が国会で「私や妻がかかわっていたとしたら議員を辞める」と言い切った以上、安倍昭恵の文字を何が何でも消さなくてはいけないと考えたはずだ。

──公文書管理や情報公開のあるべき姿からいえば、不都合なことを私的なメモ扱いにして隠そうとするのも間違っています。

まさしくそうだ。だがそれが許されているのが今の公文書のあり方だ。何を公文書とするかは役所の判断に委ねられている。保存期間も事実上、役所が決めている。すべての文書を永久保存とし、廃棄には国会承認を必要とするなどの仕組みとするべきだ。

──改ざんはほかの省庁でも起きますか?

どこでも起きうる。改ざんではないが、国土交通省は財務省が国会にうその報告をしていることを知りながら黙っていた。財務省と一緒に国民と国会を欺いていた。「昔の官僚は政治の力に負けない矜持を持っていた」というような意見を見聞きするが、それは幻想だ。昔も今も官僚はそれほど立派だったわけではない。官僚に対しては、性善説でも性悪説でもなく、「性弱説」で見るべきだと考える。つまり官僚もごく普通の弱い人間だということだ。自らの地位や所属する組織の存立が危ういと判断すれば、普段はまともな思考をする人でも、不正をしてしまう。だから官僚の弱さを利用すれば、権力者が霞が関全体を「不正遂行マシン」として使うことさえ可能になる。逆にいえば、最高権力者はそうしたことを生じさせないように自らを厳しく律することが必要なのだ。

(聞き手・本誌:長谷川 隆)

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