普段のビジネスで比較的よく使われているタイプの債権に、「譲渡禁止特約付債権」というものがある。読んで字のごとく、この特約がついていれば債務者の承諾を得ないかぎり第三者に勝手に譲渡してはいけない、というタイプの債権のことである。仮に資金繰りに困った債権者が勝手に譲渡して換金したとしても、ただの無効な譲渡となる。
しかし改正法では、この「譲渡禁止特約」が、譲渡を禁止する効力を発揮しなくなった。債務者の承諾がなくても譲渡は有効となるのである。そこで、この種の特約の呼び名は、法改正後は「譲渡制限特約」に変わる。
このルール改正の目的は債権の流動性向上にある。
現行の「譲渡禁止特約」は一般に、債務者が大企業だったり、信用力のある企業だったりする場合につく。債務者の交渉力が債権者を上回っているとき、といってもよい。そんな企業に対する債権は本来、資産としての価値も高いはずだ。それが「譲渡禁止」になっているということは、活用されない優良資産が多く眠っていることを意味するのではないか。これを担保として有効活用すれば、債権者にとっては資金調達源の多様化にもつながるし、債権の流動性が増して社会的効用もアップするはずではないか。そんな狙いが今回の改正の背景にあった。
一方で債務者の立場になると面白くはない。自分が承諾せずとも債権者がコロコロと替わってしまう。現時点の債権者は誰なのかを把握するだけでも大変だ。下手をすれば、債権がもう別の人に移っているにもかかわらず、古い債権者にムダな弁済金を振り込んでしまうおそれもある。
そこで、今回の改正では、債務者保護ルールが同時に導入されている。つまり債務者は、譲渡制限特約付債権が自分に無断で譲渡された場合、弁済は新債権者(譲受人)と最初の債権者(譲渡人)のいずれに対して行ってもよいのが原則になっている。最初の債権者に弁済した場合、譲渡人は回収金を新しい債権者に引き渡す。言い換えれば「俺は現債権者だから俺に支払え」と新債権者が出てきても、「おまえをよく知らないから前の債権者に払うわ」と、突っぱねる権利が債務者には与えられている。また債務者は、譲受人が特約を知っていたかどうか債務者にわからないケースを考え、弁済金の供託をすることもできることになっている。
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