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日本唯一の化学系ベンチャー
日本材料技研(JMTC)は、企業や大学で死蔵・休眠状態にある素材化学分野の技術を発掘。イノベーションの種として世の中に送り出すことを目的としたファブレス型ベンチャーだ。
発想の斬新さは組織の形態にある。カーブアウトした技術が一定規模に育つまで、JMTC内で揺籃。各技術が成長したら、JMTC傘下に複数の技術会社としてぶら下げる、というものだ。
そもそも化学メーカーは、大手でさえ売上高が大きい企業はそれほど多くない。特に新規技術ともなれば、1つだけで独立するのは困難だ。そこで複数を束ねることで規模の問題を解決する。
JMTCにとって第1弾のプロジェクトは、旭硝子が基礎開発を完了させたバイオマスから乳酸などの有機酸を製造する技術の事業化だ。旭硝子事業開発部の舟木宙・統括主幹は、JMTCのコンセプトを聞いたとき思わず「その手があったか」とうなったという。
社長の浦田興優氏(37)が起業を考えたのは、東京大学法学部を卒業して入社したソニー時代。栄華を誇ったブラウン管事業が、あれよあれよという間に没落していくさまを間近で体験。「最後は材料系の基礎技術を押さえることが重要」であり、「川上のイノベーションがなければ、川下のイノベーションも生まれない」という思いを強くしたという。
その後、マッキンゼーや産業再生機構を経て、投資家やVC(ベンチャーキャピタル)の見方を学んだ。資本政策の失敗で、せっかくの事業が軌道に乗る前についえていく姿も見てきた。その経験があるためJMTCの株は90%を浦田社長が保有。「事業化できない技術も無理せず撤退できる」という。今年の目標は1kgでもいいから、まずは商業化に乗るものを作ることだ。
(本誌:筑紫 祐二)
東北の伝統技術が生む素材
普段身に着けている肌着が、ウエアラブル端末になる。そんな夢のような素材を開発しているのが、宮城県仙台市に本社を置くエーアイシルクだ。
エーアイシルクが開発した新素材「フレキシブルシルク電極」は、染色の技法で、シルクの生地に導電性を持たせることができる。着ているだけで心拍数や筋肉の動きなどの生体信号を測定する。
シルクは元来、しなやかで吸水性が高い生地のため、雨天時や運動による発汗中でも精度の高い計測が可能。スポーツ向けや言語障害者用など医療向けの展開が期待されている。
エーアイシルクの岡野秀生社長(57)は、もともとオリンパスで20年以上の研究経験を持つ技術者。同社初のICレコーダーの開発などを手掛けたが、2011年の東日本大震災をきっかけに「東北復興のため何かしたい」と退職し仙台へ移住。そこで東北大学の鳥光慶一教授が研究していたシルク電極に出合い、エーアイシルクを起業した。
古くから養蚕業が盛んな東北だが、シルク産業は現在苦境の一途。東北撚糸など地元の繊維企業に染色を委託し、東北の未来を切り開く。
(本誌:秦 卓弥)






















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