なぜ京都の企業は伝統産業にとどまることなく、革新し続けることができたのか。それはこの都市に「知恵インフラ」が存在しているからだ。
京都には独自技術を持ち、先進性と独創性を重んじる職人が数多く存在する。また大学の町と呼ばれるほどに多くの大学や研究機関がある。企業にしても、愛知県豊田市と違い特定業種に偏らず多様性があるため、異業種とコラボレーションすることがほかの都市より容易だ。匠の技や新技術といった知恵を融合させることで、京都企業は高付加価値型のビジネスモデルを発展できたのだ。
また京都には先端産業を生み出す基盤もあった。セラミックは伝統産業の焼き物から発展したものだ。電子部品産業を育んだのは女性のものづくり力。オムロンは今でこそオートメーション化された製造ラインを備えているが、創業当初はすべて手作業。伝統産業が鍛えた女工の辛抱強さ、器用さが強みだった。
さらに都市が適度な規模であり、地元の企業人にとってはお互いの顔が見えることもイノベーションの助けとなっている。たとえば「京和会」という集まりがある。私や塚本ジュニア(ワコールホールディングスの塚本能交社長)、堀場ジュニア(堀場製作所の堀場厚会長兼社長)といったオーナー企業の経営者や、茶道裏千家の千宗室家元ら約15人が月に1度、花街で勉強会を開いている。
ほかにも京和会のもとになった「正和会」や、京都の伝統芸能の家元を支える「おおきに財団」など、京都財界のトップが集まる場はいくつもある。こういった場での活発な情報交換から、新しい発想が生まれている。
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