自分が制御できない事を不安に思ってもムダな訳 ビル・ゲイツの的外れな予言が教える未来の見方

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ビル・ゲイツは、1981年にこんなことを予言したといわれます。

「パソコンは未来永劫640キロバイト以上のメモリを必要としない」

約40年前、彼は、パソコンは640キロバイトのメモリがあれば、あらゆることができると断言したのです。しかし現在は、64ギガバイトのメモリが、数回のクリックで手元に届く世の中になっています。でも当時は、64キロバイトのメモリを積んだパソコンですら高価なものだったので、その10倍のメモリがあれば……と考えたのでしょう。

ならば、ビル・ゲイツがパソコンのことをよくわかっていなかったのかというと、そんなはずはありません。そうではなく、誰がやるにせよ未来の予測はそれほどあてにならないということです。

当時パーソナルコンピューターの世界のど真ん中にいた人ですら、そんな将来を見通したわけで、そう考えると景気動向をはじめ、コントロールできないことに不安になることにどれくらい意味があるかといえば、およそ専門職の人が職業上必要な程度ではないでしょうか。

僕自身も、今後の景気のおおまかな見通しはある程度自分なりに持ってはいますが、それが当たるか当たらないかは、どうでもいい話だと思っています。

カリスマ経営営学者にも「未来」は見通せない

また、経営学者のピーター・ドラッカーもまた、「未来の予測は無駄である」と指摘しています。

「未来は予見できない。ある程度予測できるという人がいたならば、今日の新聞を見せ、10年前にどれを予測できたかを聞けばよい」(ピーター・F・ドラッカー著『【エッセンシャル版】マネジメント 基本と原則』ダイヤモンド社)

これが書かれたのは1973年。インターネットすらない時代にもかかわらず、彼は未来の予測は無駄だとする予測を言い当てるという、なんとも皮肉な言葉を記しています。

『「やめる」という選択』(日経BP)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

なにかを予測すると、次はなんらかの計画に落とし込もうとするものです。でも、かの経営学の巨人が、そんなことには意味がないと断言しているのです。

話が少し大きくなりましたが、結局いいたいことは、大切なのは「自分がコントロールできて、かつ重要なこと」に集中することであって、「未来」はそこには含まれない、ということです。

多くの人が、不安にとらわれ、行動に移せずにいるなかで、なにに価値を置いてこれからの時代を生きるのか?

それを見極め、行動に移していくことが、その人だけのオリジナルの人生につながっています。

澤 円 圓窓代表取締役

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さわ まどか / Madoka Sawa

元日本マイクロソフト業務執行役員。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年日本マイクロソフト入社、2006年にマネジメントに職掌転換。幅広いテクノロジー領域の啓蒙活動を行うのと並行して、サイバー犯罪対応チームの日本サテライト責任者を兼任。2020年8月末に退社。2019年10月10日より、圓窓代表取締役就任。2021年2月より日立製作所Lumada Innovation Evangelist就任。琉球大学、武蔵野大学にて客員教員を務める。著書に『個人力』『「疑う」からはじめる。』他。

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