小説家が暴露「映像化で本は売れない」残念な実態 作家・松岡圭祐氏が明かす「業界の裏事情」

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映画の興行収入から歩合を受け取れなくとも、DVDやブルーレイ化の際には、印税が原作者・監督・脚本家にそれぞれ支払われます。いわゆる二次使用料です。日本文藝家協会・日本映画監督協会・日本シナリオ作家協会の規約により、著作者は「ソフト本体価格の1.75%×出荷枚数」と「レンタル事業者がメーカーに支払う金額の3.35%」を受け取れます。

もちろん仲介する出版社の取り分が差し引かれますが、劇場公開時に映画がヒットしていたり、ドラマ放送時に高視聴率を稼いでいたりすれば、自然にソフトの発行枚数も多くなり、収入の総額が上昇します。

動画配信も同じく、人気作なら再生回数も伸び、やはり高収入につながります。テレビでの放映時も同様です。興収50億円以上のヒットなら、充分すぎるほど儲かっているはずです。映画の興行が成功したので、「映画化」の帯つきの原作本もよく売れます。

「この俳優に演じてもらいたい」はまず通らない

金銭面では妥協できても、小説の内容自体はどうでしょうか。原作者としては当然、小説の登場人物や世界観を守りたいと思うはずです。貴方が「想造」から物語を紡ぎだした以上、それぞれの登場人物にあてがった俳優なり、アニメキャラなりの顔が印象に残っているでしょう。

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「主人公には特定のイメージがある」と主張したくなりますが、たいていの映像化企画は主演俳優(アニメの場合はキャラデザや作画の担当者)について、製作者側が候補を挙げてくるか、すでに内定済みだったりします。監督候補や脚本候補も告げられます。

貴方はそれらの人々にまかせて大丈夫だと思えば、オプション契約を締結します。そうでなければ締結しません。原作者が選べるのはこの二択のみです。「どうしてもこの俳優に演じてもらいたいんです」と力説するのは可能ですが、まず通りません。

製作者側も趣味の同人映画を作ろうとしているのではありません。原作者の理想どおりに夢を叶えてくれる神様でもありません。業界のしがらみや複雑な事情が織りなす中、異業種のプロフェッショナルたちの関係をやりくりしながら、巨額の製作費を調達し、成功の保証のない興行に挑もうとしているのです。その偉業を尊重せねばなりません。

松岡 圭祐 小説家

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まつおか けいすけ / Keisuke Matuoka

1968年生まれ。1997年に小説家デビュー。「万能鑑定士Q」「探偵の探偵」「千里眼」「高校事変」「水鏡推理」などの人気シリーズ、『催眠』『ミッキーマウスの憂鬱』『蒼い瞳とニュアージュ』などミリオンセラーや映像化作品を多数執筆。

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