「キャリアを見つめ直す」場所、リンクトイン 肩書のない女性2人が声を上げるまで

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キャリアやワークスタイルが多様化の一途をたどる昨今。自分のキャリアを会社任せにするのではなく、主体的にマネジメントする人が増えている。いわゆる「キャリア自律」だ。しかし、キャリア自律を考えたとき、女性は職場でのジェンダーギャップや家庭との両立に苦悩することも少なくないだろう。自分が心から満足できるキャリアを形成するために、いま必要なこと、できることは何だろうか。 

ジェンダーギャップがまだまだ残る日本

「キャリア自律」と言われても何から考え始めていいのかわからない、という人が大半だろう。そこで、現状を把握するための最新の意識調査と「キャリア自律」を果たした2人の「リアル」なストーリーを紹介したい。

日本のジェンダーギャップは、先進国の中で最低といわれる。女性が「キャリア自律」を望んでも、思いどおりにいかないことも多い。ではどうするか?

まずはビジネス特化型SNS「リンクトイン」による調査を見てみよう。アジア太平洋地域7カ国の約1万人(18~65歳)を対象とした「仕事に対する意識調査2021年版(英語名:Opportunity Index)」だ。

そこで明らかになったのは、日本は他のアジア太平洋地域諸国と比べて、「社会における男女平等の認識」が低いということだ。例えば、「男女平等は、公正な社会にとって重要である」に同意できると回答した人は、アジア太平洋地域7カ国の平均が約7割なのに対し、日本人は男性36%、女性52%だった。裏を返せば、日本の男性の間では「男女平等は、公正な社会にとって必ずしも重要ではない」と考えている人が多数派、ともいえる。

そして、もう1つ興味深いのは日本では「人生で成功するために重要な要素」として、回答数1位の「努力すること」に次いで、2位が「運」だったことだ。ちなみに、日本以外の国を平均すると、「社会的平等」や「適切な人脈を持っている」などの回答が上位で、「運」は9位であることから、意識の違いが顕著だ。

一方、日本人の回答を男女に分けて見てみると、「機会への平等なアクセス」「仕事に意欲的であること」を「人生で成功するための重要な要素」だと答えた女性は、男性と比べて10%以上多かった。このことから、自分自身の力でキャリアを切り開こうとする意識は、女性のほうが男性よりも強いと考えられる。

また、同社の「日本女性の仕事と生活に関する意識調査」によると日本女性の25%は、他人に仕事や人生の相談をしないという結果も判明した。

男女格差、人生の成功を運任せにする社会の空気、仕事の悩みを吐き出す相手の不在など、キャリア自律を目指す日本女性を取り巻く環境は、いささかハードである。だが、悲観してばかりもいられない。どうすれば自分が満足のいくキャリアを手にできるのだろうか。

専業主婦からキャリアを築いた「普通の女性」

ここで、自律的にキャリアを築いた2人の女性のストーリーをご紹介しよう。1人目は、現在、経営人材領域に特化したプロフェッショナルファームで、キャリアアドバイザー兼エグゼクティブサーチ事業部リサーチャーとして活躍する、鈴木祐美子氏。

鈴木 祐美子
経営者JP キャリアアドバイザー/LinkedInクリエイター/元専業主婦(7年間)

鈴木氏は、新卒で大手コンビニチェーンに就職後、人事部やオペレーション本部で経験を積み、キャリアアドバイザーの道を究めようと人材サービス会社に転職した。しかし、夫が転勤族だったことから大好きな職を手放し、専業主婦を選択する。

しかし、本当にこれでよかったのかと、モヤモヤを拭い去れなかったという鈴木氏。専業主婦生活が5年ほど経った頃、夫の東京転勤と働き方改革の盛り上がりが後押しとなり、キャリア復帰を決意。

育児をしながらキャリアコンサルタントの資格試験に挑戦し、合格後オンラインカウンセラーとしてデビュー。ビデオ通話を活用したキャリアカウンセリングを始める。たまたま仕事で参加した人材業界とリンクトインのコラボセミナーを機に、休眠していたリンクトインも再開。自分なりに経済ニュースを咀嚼(そしゃく)し、意見をアウトプットしてみようと、投稿を続けた。

すると、鈴木氏の価値観に共感する人が少しずつ増え、人を紹介してくれたり、ダイレクトメッセージで採用のオファーが送られてきたりと、思わぬ反応があった。その後も一労働者としての視点から日本の雇用に関する問題提起を続け、現在リンクトインでの鈴木氏のフォロワーは1万500人を超える。2020年のコロナ禍の中、雇い止めにあってつらかったときも、リンクトインが支えになったという。下記、リンクトインの国際女性デーのブランド動画にも、7カ国の女性の1人として出演した。

リンクトインでの発信をきっかけに、業界や年齢や国を越え、心から共感できる人と話ができていると振り返る鈴木氏。さまざまな垣根を超えてつながることのできる人たちの存在を知ったという。

「リンクトインで起こったこれまでの経験は奇跡のように思えます。専業主婦から復帰した当事者としても、1人のキャリアカウンセラーとしても、日本の雇用の多くの課題は、子育て世代の主婦がキャリアを再構築することで改善に向かうのではないかと考えています」

と、当事者としての意見を発信できるプラットフォームとしてのリンクトインの可能性に期待している。

「私はどこかに所属していたわけでもなく、どうやって仕事に復帰すればいいのかわからず不安でした。私が発信することで興味を持ってもらえるとは思っていなかったのですが、私の意見をフェアに前向きに受け止めてくれるコミュニティをここ(リンクトイン)で見つけることができました。私ができたのだから、あなたにもできる、と同じ立場に立たされている人に言いたいんです」(鈴木氏)

そして、2人目は薄井シンシア氏。30歳で家庭に入り、17年間の専業主婦期間を経て、47歳で“給食のおばちゃん”として仕事復帰。さらに、52歳で電話受け付けのアルバイト、外資系一流ホテルの営業開発担当副支配人とキャリアを重ねた。2018年から務めていた外資系飲料メーカーを退職し、現在は自身の「次のステージ」の準備で忙しい毎日を過ごしているという。彼女のキャリアを基にした本がドラマ化されるなど、メディアでの露出も多い。

薄井 シンシア
東京外国語大学卒業後、貿易会社に2年勤務。17年間の専業主婦期間の後、47歳で就活、カフェテリアマネジャー、電話受け付けアルバイトを経て、外資系ホテル、飲料メーカーでの勤務経験を持つ。元ACCJ・観光産業委員会 委員長

長い専業主婦期間があったにもかかわらず並々ならぬ行動力でキャリアを積み重ねている薄井氏は、キャリア自律についてこう語る。
「私の経歴を見た人はよく、『すごいキャリアアップですね』と言います。しかし、それを判断するのは自分自身です。給料という基準で考えると、転職で前職より下がったこともあります。だからといって、私はキャリアダウンしたとは思いません。結局、そのキャリアに納得できるのか、という答えは自分の中にしかない。だからこそ、自分との対話を続けて、自分が何を大事にしたいのかを考えることが重要ではないでしょうか」

キャリアも幸せも正解はない、と薄井氏は続ける。

「人間は生き物なので年齢や環境によって正解は変わります。今日はぴったりくる答えも10年後は違う。自分にとってベストのキャリアや幸せが、その時々で変わることを前提としたうえで、自分の中の変化を柔軟に受け止めて、どうシフトするかを考えたほうがいいでしょう」

キャリア自律の第一歩は、自分が大事にしたいことを明らかにすること。そのためのアクションの1つとして、リンクトインで自分の思いを発信する、あるいは人脈づくりをすることは有効だという。

「コネクションのなかった私にとって、リンクトインは活用する価値が大きかった。私は、“観光のプロフェッショナル”というセルフブランディングをしたいと思ったので、最初の頃は観光に関することばかり投稿していました。すると、『日本の観光は薄井シンシアが詳しいようだ』というイメージが定着し、観光関連で多くの問い合わせが来るようになりました。それが、ACCJ(在日米国商工会議所)・観光産業委員会の委員長としての印象も強めてくれました」

リンクトインで見つける「自分だけのキャリアの糸口」

「リンクトイン」について、リンクトイン日本代表の村上臣氏は、次のように説明する。

「世界で7億4000万人を超える登録者がいる『リンクトイン』は、ビジネスに特化した世界最大級のSNSとして、世界中で働くすべての人への経済的な機会の提供を目指しています。キャリア形成・スキルアップに役立つ関係性の構築や情報の取得、交換目的に利用されており、とりわけ米国では、『社会人ならリンクトインアカウントを持っていて当然』と言われるほど浸透しています」

村上 臣
リンクトイン 日本代表

一方で、日本では、リンクトインは一部の外資系企業勤務者の間で使われる転職用ツールというイメージが強く、英語で使うものと思われていた。しかし、ここ数年の間に日本語で発信するユーザーが大きく増加。企業のトップのみならず、幅広い職種のビジネスパーソン・学生が利用しており、ダイバーシティに富んでいるという。専任のジャーナリストを配した「LinkedIn News編集部」では、積極的に情報発信している人を「リンクトイン・クリエイター」として個別に200人認定し、リンクトイン上でのより活発な情報発信を促している。また、 “安全なSNS”として認知されていることもリンクトインの特徴の1つだ。

「当社はユーザーに対し、『オンビジネス・前向き・議論を育む投稿』を呼びかけています。建設的な議論をするために設計されたUIと実名投稿、という仕組みも安心して参加できる場所づくりを支えています」

リンクトインというコミュニティに参加することで、一人ひとりのキャリア形成の意識に変化が期待できる、と村上氏は語る。

「(冒頭の)『仕事に対する意識調査2021年版』で明らかになったように、ジェンダーギャップの改善や、自律的なキャリア形成の推進など、日本の労働環境はまだまだ変革の余地があります。しかし、皆さん一人ひとりが変化することで変わっていけることがあります。リンクトインで自分の仕事の話をしたり、キャリアについて意見交換したり、自分の考えに共感する人とコミュニケーションをとったり、そうした“壁打ち”によって、マインドや行動が少しずつ変わっていくはずで、鈴木氏や薄井氏に限らず、実際にそうしたことでキャリアが切り開かれてきているケースを今ではリンクトインで目にすることができ、とてもうれしく思っています」

鈴木氏は実際に使用しているユーザーとしての所感を次のように語る。

「ジェンダーや雇用に関する投稿は炎上しやすく、SNSなどで投稿しても、意見が潰されたり叩かれたりします。いわゆる炎上が起こると、社会的立場が弱い人や地位が高くない人は意見を言いにくくなってしまいます。だからこそジェンダーや雇用など重要な社会課題を議論する際には、安心安全な議論の場が必要だと思います。リンクトインではダイバーシティを大切にし、違った意見を建設的に話し合える土壌が整っており、立場が弱い人の意見でも尊重される雰囲気があると感じています」

今、コロナ禍をきっかけに、仕事や働き方を見直し始めた人も少なくない。さらに、近年はパラレルキャリアやフリーランスを選ぶ人も増える中、個人が会社組織を超えたつながりを持つ重要性は、これからますます高まるはずだ。そんなとき、拠り所になるネットワークを築いていることで、キャリアを考える際に当たってのヒントを得られるだろう。

リンクトインはSNS機能以外にも、キャリアに役立つスキルを習得できるオンラインの学習コースを提供しており、現在、女性のキャリア向上のためのコースを特別に無償公開中だ。個人のビジネスネットワークの構築のみならず、ビジネスチャンスを広げるところまでと幅広い。

「リンクトインはこれまで日本にないような、多様性を担保した女性のキャリア形成の心強いパートナーになるはずです」(村上氏)

リンクトインに登録してまずは編集部をフォローし、一人ひとりに合った自分のキャリアを見つけてほしい。下記のタグでの投稿も要チェックだ。 #ワタシゴト #WeCanDoIt

【無償公開中のLinkedInラーニング】
リンクトインでは、日本で最も必要とされるスキルをデータから算出し、それらのスキルが必要とされる職種を特定し、その職種に必要とされるトピックやキャリアトラックに関する動画コースを集めた詰め合わせパッケージを公開している。以下のリンクからは2021年末までアクセス可能だ。
https://opportunity.linkedin.com/ja-jp/skills-for-in-demand-jobs
国際女性デーに合わせて公開した女性向けのラーニングコースは以下のとおり
こころの知能指数(EQ)の高め方
人脈の広げ方
上司と良い関係を築くには  
チームを率いてまとめるには
女性が職場で活躍するための成功戦略

 

「仕事に対する意識調査2021年版(英語名:Opportunity Index)」調査概要
調査名称:仕事に対する期待値調査  (Opportunity Index)2021年版
調査会社:独立系市場調査会社GfK
調査期間:2021年1月
対象者:18~65才の約1万人(うち日本は約1200人)
手法:オンライン調査
調査対象国:オーストラリア、中国、インド、日本、マレーシア、フィリピン、シンガポール
(*)2020年は22カ国、2019年は9カ国を対象に、類似の仕事に対する期待値調査を実施