ダークデータの整備がDXを促進する 2025年の崖まで5年、BtoB企業の勝ち残り戦略

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前回の『入り口からのデータ整備が、DXの近道』では、ランドスケイプの湯浅将史氏より、入り口からデータを整備することがDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上では重要だということをお聞きした。しかし、入り口から整備するだけでは不十分で、蓄積して死蔵されているデータ(ダークデータ)をごみの山のように置いておくとDXの阻害要因となってしまう。
今回はデータの品質劣化を回避し、活用できる状態に保つROD(Return On Data)という考え方の重要性と事例を紹介しよう。

企業が保有するデータの平均57%は死蔵されているダークデータ

企業が構築するデータは以下の3種類に分けられている。

・クリーンデータ:ビジネスにおいて、有効と判断され活用できるデータ
・ダークデータ:有用な情報であったとしても、その価値を認識しておらず、死蔵されている(休眠)データ
・ROTデータ:古かったり、重複が多かったりと利用価値のないデータ
(Redundant、Obsolete、Trivial=冗長、陳腐、無駄)

2020年7月4日付の日本経済新聞の記事によると、『企業が保有するデータの平均57%が休眠データである』と記載されている。さらに、ダークデータだけでなく、企業内にはROTデータも存在している。このようなデータを放置すると、保存にかかるストレージのコストや、漏洩によるブランド力の低下リスクなどのマイナス要因につながってしまう。

「DX実現の前段階であるデジタライゼーションの加速により、昨今、企業はかつてない勢いでデータを作成し、保存しています。BtoBの場合は、社名変更や住所移転、倒産、統廃合などからデータの正確性や鮮度を保ちにくく、蓄積すればするほどダークデータやROTデータの増加につながり、無駄なコストが増えています」(湯浅氏)

そのため、ROD(Return On Data)の考え方が重要だ。

RODを行うデータ基盤を構築したほうがコストメリットは大きい

ダークデータを生まないためにRODを行う基盤を構築すると膨大なコストがかかるイメージを持たれる方も多いのではないだろうか。一般的にはデータを保持しておくサーバーやデータセンター、データにアクセスするためのソフトウェアなどのコストが発生するが、最近ではデータが大量に作成されるようになったため、データの精度を維持するために人件費などが多くかかっている。

「ランドスケイプでは毎日のようにデータメンテナンスを行っていますが、その件数は2019年1年間だけでも、事業所を含む社名変更は9万1104件、住所変更は15万9581件にものぼります。社名変更、住所移転、倒産などが毎日のように発生していることが要因であり、これらを手作業でメンテナンスすることは現実的ではありません。不定期に実施するスポットでのデータメンテナンスを行うケースもありますが、日々データは推移しているため、リアルタイムに自動メンテナンスする基盤を構築するほうがコストメリットは大きくなります」(湯浅氏)

DX実現のためには、整備されたデータをリアルタイムに活用することが必要であり、ダークデータを生まないためにRODを行う基盤を構築する必要がある。それでは、ランドスケイプ社が支援したDX事例を2社紹介しよう。

DXを加速させるデータ活用法について、タイアップ一覧はこちら

事例(NECネクサソリューションズ株式会社)

NECネクサソリューションズ株式会社(以下、NECネクサソリューションズ)はコンサルティングから運用に至るさまざまなサービスをワンストップで提供する、NECグループのシステムインテグレーターである。

「NECネクサソリューションズ様は2001年にNECグループ販売会社の5社が統合して発足した会社です。各社でバラバラであった営業プロセスを定義し、マネジメントを共通化するためにソフトブレーン社のeセールスマネージャー(SFA)を導入しています。とくに、商談につながる良質なビジネス機会を創出するためのインサイドセールスに注力していました。営業にパスしたものがいかに商談・売り上げにつながっているかを重視しており、リアルタイムに精緻なデータを活用し、見込み顧客数や案件創出数を集計・分析する必要がありました。しかし、営業マンから登録や変更依頼が発生した際に、顧客管理担当者が情報を確認、手動で変更処理を行っており、タイムラグが発生していました」(湯浅氏)

そこで、NECネクサソリューションズはデータ統合ツールを導入し、eセールスマネージャーと連携。データの重複や表記ゆれを防ぎ、リアルタイムで社名変更や住所移転など変更情報の自動メンテナンスを実現。

「データ統合ツールの導入により、データの鮮度維持にかかっていたコストや工数を削減し、インサイドセールスへさらに注力することを可能にしました。また、リアルタイムで精緻なデータを活用して指標を算出することもでき、最適なプロセスマネジメントを実現しました」(湯浅氏)

事例(受託開発ソフトウェア企業)

「ソフトウェアの受託開発を行う大手企業では、さまざまなキャンペーンや商材(部署)ごとにデータが散在していました。それにより、別の部署が持つ関係性を生かしたアップセルやクロスセルなどの営業活動ができませんでした。散在したデータを一元化するために、手動でデータ整備やメンテナンスを行っていましたが、多大な業務負荷がかかるもののダークデータが生まれやすく、ビジネス展開のスピードに追いついていませんでした」(湯浅氏)

そこで、データ統合ツールを導入。散在しているデータを自動で統合し、マスタデータを構築。また、データメンテナンスの自動化も実現。

「データ登録や整備、ダークデータのメンテナンスを行うために発生していた業務時間が年間2万6200時間ありましたが、データ統合ツールの導入により、それらにかかる時間の51%削減を実現しています。年間の業務時間で換算すると、1万3300時間の削減につながっています。その結果、空いた時間と整備されたデータを活用し、新しいビジネスモデルやサービスを生み出すこともできています」(湯浅氏)

データ統合ツールを導入することにより、部署ごとにこれだけ多くの業務時間の削減につながっている。

このように、RODを自動化し、ダークデータを生まないための基盤を構築することにより、業務時間の削減だけでなく、データの活用が促進されDX実現に近づくといえるだろう。

RODを行うデータ基盤にオンラインデータを統合し、活用へ

これら2社の事例によって、データメンテナンスを自動化し、ダークデータやROTデータをいかにRODするかがDXをスムーズに促進することをご理解いただけたのではないか。しかし、DXを実現するためには、データ整備・メンテナンスをするだけではなく、データ活用につなげていくことも重要なポイントである。

「最近、BtoBにおいてデジタルマーケティングが注目され、とくにコロナ禍も伴い、企業の購買プロセスは急速にオンラインに移行しています。インターネットの普及やメディアの多様化により、ガートナー社の調べでは、『購買プロセスの57%は営業が訪問する前にすでに完了している』と言われています。そのため、WEBサイトなどインターネットを活用した情報提供が重要となっています。

しかし、インターネットでの情報収集時に実際に問い合わせにつながる件数は限られており、大半が問い合わせにつながらずに終わってしまいます。これからのBtoBマーケティングでは、問い合わせをする前のオンライン上での動き=潜在的なニーズをキャッチして、マーケティングに活用することが重要です。そういった営業プロセスの改善がDXにつながります」(湯浅氏)

次回は、オフライン・オンラインのデータをシームレスに連携し、マーケティング全般にどのように活用してDXにつなげていくかについて紹介したい。

DXを加速させるデータ活用法について、タイアップ一覧はこちら