88歳でも監督やめないイーストウッドの円熟味 アメリカの英雄から学ぶ「粋な老い方」
クリント・イーストウッド監督が、あいかわらず意気盛んだ。最新作『運び屋』(日本では3月8日公開)が北米公開される昨年12月にお会いしたときも、背筋をピンと伸ばして部屋に入ってきたかと思ったら、質問にも、丁寧かつユーモアのセンスたっぷりに答えてくれた。
映画を監督するのは、時間、労力、精神力、すべてを要する大変なこと。働き盛りの売れっ子監督でも、2~3年に1本がせいぜいである。なのに、88歳のイーストウッドは、平均1年に1本のペースで映画を作り続けている。
彼と同世代の俳優ジーン・ハックマン(89歳)やジャック・ニコルソン(81歳)は、もう何年も前に引退し、ロバート・レッドフォード(82歳)も今年日本公開予定の『The Old Man & the Gun(原題)』を最後にスクリーンから遠ざかると言っているのに、イーストウッドにその言葉は無縁だ。直近の取材では、「映画作りは大変なのに、まだやり続けるのですか」と質問を投げかけてみると、「好きだからね」と、ごくあっさりした答えが返ってきた。
なぜ「引退」を考えないのか?
過去には、こんなふうにも語ってもいる。
「引退を考えたことはないよ。もちろん、引退したら何をするんだろうと思いをめぐらせてみたことくらいはある。きっとゴルフでもやっているのかなあ、と思った。
中には早く引退して、その生活を楽しんでいる人もいるよね。一方で、無理に引退させられる人もいる。仕事がなくなったとか、あるいはほかの理由で。ビリー・ワイルダーも60代でやめてしまったし、フランク・キャプラも60代だか70代の初めだかでやめた。90代まで生きていたのに、どうしてあんなに早くやめたんだろう。単にやりたくなかったのか、あるいはテーマがなくなったのか。
かと思えば、ジョン・ヒューストンのように、最後の映画『ザ・デッド』を、車いすに座って酸素ボンベをつけて撮影した人もいる。そして、あれはすばらしい映画だった」(2010年の取材時)
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