共和党候補者が急速に「トランプ化」するワケ トランプ大統領の過激な論調に同調
「共和党候補は、訴えるべき一貫性のある経済的なメッセージに欠けている」と語るのは、民主党候補を支援する運動団体「ハウス・マジョリティPAC」の広報担当を務めるジェブ・フェイン氏だ。
民主党が上院と下院の双方で過半数を回復できるチャンスが最も大きくなったように思われたのは、先月だった。
その後トランプ大統領率いる共和党側は、ブレット・カバノー氏の最高裁判事指名承認をめぐる論争を好機とみて、承認に反対する人々を「リベラルな暴徒」と決めつけ、民主党が議会で優位に立てば米国は無政府状態に陥るとほのめかした。
このメッセージはすぐさま、共和党全国委員会(NRCC)や連邦議会リーダーシップ基金などの共和党支援団体によって拡散された。両団体は、民主党は隠れた「過激派」で「社会主義者」だと非難するコマーシャルを作成した。
民主党候補は「リベラルな暴徒」の一味?
引退するポール・ライアン下院議長と関係の深い同基金は、ケンタッキー州やミネソタ州、バージニア州といった激戦区の民主党候補は「リベラルな暴徒」の一味だと主張する一連のラジオコマーシャルを流した。
やり玉に挙げられた民主党候補の中には、元海兵隊パイロットのエイミー・マグラス氏、陸軍将校としてイラク戦争に従軍したダン・フィーハン氏、元CIA幹部のアビゲイル・スパンバーガー氏なども含まれた。
テネシー州のマーシャ・ブラックバーン氏、インディアナ州のマイク・ブラウン氏、ミズーリ州のジョシュ・ホーリー氏といった共和党の上院議員候補は先週、やはり中米からの移民集団は脅威だと警告。ブラックバーン氏に至っては、「違法な外国人の暴徒」とまで言い放った。
共和党関係者の多くは、ここ数週間のうちに複数の選挙区で情勢が好転したことから、戦略の転換によって上院の過半数を維持できるチャンスが広がったと話している。
NRCCの広報担当ディレクターを務めるマット・ゴーマン氏は、「民主党が権力を握れば、彼らの極左の暴徒たちが、国家の機能不全を加速させ、経済成長を徐々に停止させてしまう」と語る。
共和党の戦略に詳しい関係者によれば、現在の同党の選挙戦略は、共和党を支持する有権者の社会的な価値観に訴え、民主党候補への乗り換えを防ぐことにあるという。その際にトランプ大統領が文化を巡る争いに慣れていることを利用するのだという。
ペンス副大統領の元側近マーク・ロッター氏は、トランプ大統領が持つ「鍵となるメッセージやテーマを見極め、それを話題にして、有権者にどのような影響を与えるか判断する能力」を称賛する。
だが、トランプ路線を行き過ぎると、政治的リスクが伴う。昨年、バージニア州知事選が近づくなかで、共和党のエド・ギルスピー候補の選挙運動では「移民ギャング」への警告がどんどん強まっていった。だが郊外の有権者はこれに惑わされず、ギルスピー氏は完敗を喫した。
郊外の比重が高い選挙区の共和党下院議員候補の多くが、選挙期間中、トランプ大統領との距離を保とうとしているのは、もっぱらこうした理由によるものだ。
それでも、こうした共和党の穏健派候補の多くは、来週の選挙で民主党候補に議席を譲ることになりかねない。これはつまり、長期的に見れば、過半数を占めているか否かにかかわらず、共和党の連邦議会議員はこれまで以上に大統領との連携を強めることを意味している。
(文:James Oliphant 翻訳:エァクレーレン)
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