西郷隆盛の人望が驚くほど厚かった根本理由

600人が「ついていきたい」と後追い辞職

西郷隆盛の言葉にちりばめられた、時代を超えて通用するリーダーの心得とは(写真:筆者提供)
明治維新という日本史上最大の革命を成し遂げた西郷隆盛は、日本史上最高のリーダーでもあった。その言葉にちりばめられた、時代を超えて通用するリーダーの心得を、『信じる覚悟 超訳 西郷隆盛』を上梓した鈴木博毅氏が解説する。

600人が西郷を慕って職を辞す

リーダーシップの神髄のひとつは「ついていきたいと周囲から思われる」ことだと言われています。その意味で、明治維新前後に活躍した西郷隆盛ほどリーダーの資質があった人は少ないでしょう。1873(明治6)年、彼が陸軍大将を辞任して郷里の鹿児島に帰ったとき、当時中央で役人や軍人をしていたおよそ600人が同時に職を辞したほどだったのですから。

現代でも「部下がついてこない悩み」を抱えている上司は少なくありません。西郷隆盛の没後140年の今年、現代のビジネスパーソンにも通じる「リーダーシップ」の要諦を彼の言葉から抽出していきます。

1.好き嫌いの感情を捨てて決断せよ

リーダーは公平無私な視点から決断すべき、という強い信念を西郷は持っていました。なぜ公平であるべきか。曇りない目で人の実力を正しく測るためであり、多くの人を統べるリーダーには、公平さを源泉として人々の信任を得ることが欠かせないからです。

その意味で、西郷は「心のサイズを大きくすること」が必要と説きます。

「心のサイズを大きくする」とは、嫌いなものも受け入れるということです。好き嫌いの気持ちを判断基準にすると、物事の正誤を見分ける目を鈍らせてしまいます。多くの人とかかわるリーダーが、好き嫌いを基にさまざまな判断をしていけば、多くの人が「このリーダーについていくのはバカバカしい」と感じてしまいます。

また彼は、自分の仕事で上役と部下、その上下両方と密な関係を持つことが、物事を成し遂げる秘訣だとしています。

上に取り入るだけでは下がついてこず、下の面倒見がよいだけでも上を動かせません。自分がプロジェクトリーダーであれば、組織の上下双方ともに良好な関係を築いておく。こうすることではじめて、難しい問題さえも解決できるリーダーシップが発揮できます。ここでも組織最適化や、成果の極大化のために、自分の得意な部分だけではなく、あえて苦手な部分も積極的に受け入れるべきだとする西郷の姿勢が垣間見えます。

西郷は長州征伐で長州藩を帰順させ、戊辰戦争では勝海舟との会談で江戸無血開城を実現させました。長州藩にとどめを刺すことも江戸城を攻め落とすこともできたにもかかわらず、そうしなかった背景には、味方だけでなく敵でさえも受け入れ、公平無私の目で「何が最善か」を見誤ることがなかったからでしょう。

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