日本ではひところ「ゾンビ企業」という言い方があった(個人的には、一生懸命やっている社長や社員の方に失礼ではないかと思う)。企業の新陳代謝が活発ではないという議論の中でそのような用語が使われてきた。
最近、中国に行き、講演と調査をしてきた。現地でいろいろ調査してわかってきたのは、経済運営の基本方針を決める「中央経済工作会議」でも示されたが、中国では、経済発展パターンの転換と、構造改革が推進されているということだ。
輸出型から内需型の経済に向かうことはもちろん、イノベーションの強化と“産業の選別と淘汰”を進めて、高付加価値産業とサービス業の育成に注力しているのである。この構造改革は2~3年というスパンで考えられており、それが進めば、中国経済はより強化されるだろう。
日本では、国会が閉会、政治は次の選挙に向かって動き出し、経済政策の議論は止まりつつある。政治的な議論は小職の専門ではないので触れないが、少なくとも、現在も中国は、短期的で景気刺激的な経済政策よりも、産業を中心とした中長期的な経済改革を進めているということを感じることができた。
金融緩和の効果も落ちてきており、財政赤字も限界まで来た今、そもそもの経済の実体である産業や企業の改革を、中長期的に本格的に進めるべき段階に来たのかもしれない。そうしないと、このゆでガエル的な閉塞状況を抜け出すことはできそうにない。
9月14日公開
しゅくわ・じゅんいち
博士(経済学)・映画評論家・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。1987年慶應義塾大学経済学部卒、富士銀行入行。シカゴなど海外勤務などを経て、98年UFJ(三和)銀行に移籍。企画部、UFJホールディングス他に勤務。非常勤講師として、東京大学大学院(3年)、(中国)清華大大学院、上智大学、早稲田大学(5年)等で教鞭。財務省・経産省・外務省等研究会委員を歴任。著書は、『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、『通貨経済学入門』・『アジア金融システムの経済学』(以上、日本経済新聞出版社)他多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA、facebook:junichishukuwa ※本稿の内容はすべて筆者個人の見解に基づくもので、所属する組織のものではありません。
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