太陽電池に賭ける日本の電機業界、惨敗のデジタル家電から急シフト

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 「世界経済が激変し、成長は難しくなった。新たな成長のエンジンが欲しい。三洋は魅力的な事業を持ち、当社の技術や経営資源と大きなシナジーが期待できる」

近年の電機業界における最大のビッグニュースとなった、パナソニックによる三洋電機買収。昨年11月の記者会見の席上、パナソニックの大坪文雄社長は、緊張した面持ちで買収の意義を語った。

パナソニックが三洋の子会社化に費やす費用は最低でも5600億円以上。経営再建中である三洋の業績や財務内容を考えれば、びっくりするような大盤振る舞いだ。

なぜ、それほどの巨費を投じてまで、パナソニックは三洋を欲しがったのか。

大赤字の業界に残されたフロンティア

大きな狙いの一つが、太陽電池事業の獲得である。パナソニックは太陽電池の事業化を目指して長く研究を続けたが、大幅な業績悪化に見舞われた2001年に研究開発を中止。家庭用エネルギー分野では燃料電池に経営資源を集中し、その実用化を急いだ経緯がある。しかし、燃料電池は何とか実用化に漕ぎつけたものの、化石燃料のガスを必要とするうえ、発電量やコスト面などで多くの課題を抱える。そうした中で、“捨てた”はずの太陽電池が再生可能エネルギーの大本命として日増しにクローズアップされ、パナソニックは強い焦りを感じていた。

三洋はシャープ、京セラに次ぐ太陽電池の国内大手で、太陽光を効率よく電気に変える変換技術では世界最高水準の技術力を持つ。パナソニックはAV・通信機器や生活・調理家電から蓄電池、照明、配電盤などの住宅設備に至るまでグループ内で手掛けており、そこに電力の入り口となる太陽電池事業が加わるメリットは大きい。「たとえば、エネルギーを『創る(=太陽電池)』『蓄える(=蓄電池)』『省く(=省エネ家電)』を一元管理して、それをテレビなどの画面上で簡単に管理・調整できる仕組みを早期に提案したい。両社の技術融合を推し進め、環境・エナジー分野のリーディングカンパニーになる」と大坪社長は力を込めて言う。

一方、シャープをはじめとする既存プレーヤーも、従来の主力事業から太陽電池への傾斜を強めている。シャープは大阪府堺市の沿岸部に次世代太陽電池の新工場を建設中で、09年秋をメドに新工場の第1号ラインを稼働予定。さらに10年春までに総額780億円を投じて新工場の能力を3倍に引き上げ、最終的には世界最大級となる1ギガワットの能力を持った工場にする。国内2位の京セラは08年度から3年間で全社の生産能力を倍増、三洋も10年度までに太陽電池へ700億円を投じて供給能力を2倍以上に引き上げる。

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