パナソニックが今、米冷蔵庫を買収する意味 M&A枠1兆円の今期分は使い切った

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津賀パナソニックは車載、住宅のほか、BtoBビジネスに商機を見い出そうとしている(写真:共同)

20年間続くトップラインの停滞に、津賀パナソニックは終止符を打つことができるのか――。その試金石となる買収が発表された。

パナソニックは米国の業務用冷蔵庫大手・ハスマン社を買収する。買収額は約1800億円で、取得時期は2016年4月1日を予定している。ハスマンの業績は、売上高約1200億円、営業利益90億円(2014年12月期)。パナソニックは、2018年度までに1兆円規模の資金をM&Aなどに充てるとしており、今年度枠として設定していた2000億円を今回の買収でほぼ使い切った計算だ。パナソニックが計画的に買収を進める背景には、「2018年度に売上高10兆円」という目標の存在がある。

パナソニックが初めて、売上高10兆円に言及したのは2004年。当時の中村邦夫社長が2010年度に売上高10兆円を目標として掲げた。しかし、当時すでにパナソニックは成長に課題を抱えており、初めて売上高が7兆円を突破した1992年3月期以降、6兆円台と7兆円台の間を行き来する状態にあった。そこでデジタルカメラやプラズマテレビをテコに、拡大路線を採ったが、過剰投資があだとなり、2011年度と2012年度に巨額赤字に転落。結局、2011年度~2014年度は、売上高で7兆円台を推移している。

消費者向け製品では成長できない

今2015年度の売上高目標は、前期比3%増の8兆円だが、上期は前年同期比1%増にとどまり、「下期の売上高は、市況の悪化もあり、厳しいと認識している」(津賀一宏社長)ため、今期も”定位置”に落ち着く公算は高い。

パナソニックの売上高が足踏みしている理由の一つに、家電など消費者向けビジネス(BtoC)が歴史的に強いことが挙げられる。消費者向け製品は単価下落が激しく、ライフサイクルが短いために、BtoBビジネスに比べて安定的な成長が難しい。パナソニックはテレビやデジカメ、固定電話に携帯電話、ファックスなど、幅広い製品を取り扱ってきたものの、今では売上高がわずかになっている事業も少なくない。

一方、20年前は売上高で互角だった日立製作所の場合、インフラ事業などのBtoBビジネスを抱え、2014年度の売上高は9.7兆円に成長。その背中は遠くなった。

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