世界最大級の保険会社が語る欧州危機 アクサグループCEO

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アジアに経営資本配分 悪天候下でも成長持続

──欧州債務危機が及ぼす保険業界とアクサグループへの影響は。

保険は銀行と異なり、実際の影響は小さい。ただ長期間低金利が続くと、運用収益が低下する。公的債務も不確実性の問題が残る。

アクサグループのビジネスモデルは非常に強固であり、弾力性にも富んでいる。危機がいかに深まろうとも、収益基盤は強固であり、ここ3~4年の利益水準は40億ユーロレベルで安定している。これは事業分野や地理的な面で多様化・分散化を進めてきた結果だ。危機にもかかわらず、本業は成長を続け、昨年のグループ全体の顧客数も1億人を突破した。

財務面も非常に強固で資本レベルは十分に満たされている。欧州周辺国の国債の保有比率も非常に限定的だ。アクサは堅牢な船であり、安定した航行ができる状態にある。航海する海が大変な悪天候で、本来の全速力の航行スピードには至っていないが、少なくとも前進はしている。

--今年、HSBC(香港上海銀行)の損害保険業務のアジア部門を買収し、中国では最大手の中国工商銀行と合弁会社を設立。その狙いは。

経営資本の配分を考えた場合、アクサグループは最も成長が見込める地域と、最も収益が見込める地域のコンビネーションとして、最適な地域に資源を配分している。アジアは成長、収益ともに期待できる有力な地域であり、ビジネス展開を加速させている。もちろん、そこには日本も含まれる。

HSBCの件は、損害保険ビジネスを考えた場合、買収によって香港やシンガポールにおけるプレゼンスを飛躍的に伸ばせる。そしてメキシコにも展開しており、補完的なビジネスになると考えた。HSBCはアジアでは強力な存在であり、高いブランド力がある。アクサの世界的な保険ブランドとしての認知と、HSBCのアジアでの高いブランド力の組み合わせは、大きなプラス効果を生むと認識している。

中国工商銀行との合弁もブランドの観点から大きな意味を持つ。世界最大の銀行である中国工商銀行との協業は、中国でのビジネスの加速を促進するだろう。中国そのものには10年以上前から足掛かりを持っているが、今回の合弁会社設立で中国での成長も非常に強いもの、そしてスピード感のあるものになる。

 

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