最強市民ランナーが少ない練習で勝てるワケ 「アマの星」川内優輝"育ての親"が語る

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練習環境に恵まれた実業団選手ならば月間1000㎞以上走ることも珍しくありません。しかし、公務員としてフルタイムで働き、練習時間に制約のある川内の走行距離は月間600㎞程度。それでも実業団選手に勝つのですから、注目されたわけです。

私の練習法は、"頑張りすぎない""走りを楽しむ"がモットーです。川内にも、よく「頑張るな」「頑張るな」と声をかけたものです。

川内は大学卒業後も私の練習法をベースに実績を重ねてきたわけですが、学習院大の陸上競技部に入部したての頃、実は私の指導法にとても懐疑的でした。そんな川内が、いかにして私の練習法を実践し、強くなったのか。

抑えた練習で、川内は開花した!

私が監督を務めていた学習院大は、当時も今もとても箱根駅伝の本選出場を狙えるようなレベルにはありません。そんな学習院大にとって高校時代は故障続きで無名選手だったといっても、川内の実力はエース格でした。

入部したての練習で川内のジョッグを見ると、なぜ高校時代に故障に悩まされていたのか不思議なほどフォームが安定しています。
 右足が着地した後、ちょっと外向きに跳ねるクセがあるものの、故障に悩まされるような乱れたフォームではありません。「スピードはないけれど、脚は頑丈そうだな」というのが私の第一印象でした。

週2回のポイント(強化)練習は、水曜と土曜の夕方にやっていました。水曜は1000m×10本などの「インターバル走」や陸上トラックで16000m(40周)の「ペース走」といった「スピード練習」。土曜は20〜30㎞の「距離走」です。

いずれのペース(スピード)も、他の強豪校とは比べものにならないほどゆったりしたもの。選手それぞれ走力に差はありますが、個々人のレベルにおいてかなり余裕を持った"ゆったりペース"で走るというイメージです。

高校時代にキツい練習をこなしてきた川内は、「えっ、これで終わりですか?」という表情を浮かべ、私の練習法がもの足りないようでした。

高校時代はもっともっと追い込んでポイント練習を繰り返していたのですから、拍子抜けしたのでしょう。「こんな練習で本当に大丈夫なんだろうか?」と懐疑的になっていたに違いありません。

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