国内カラオケ市場飽和でもボーカロイド、K−POPなどの独自配信で差別化する--日野洋一・鉄人化計画社長
全国津々浦々に店舗ができ、すでに成熟したカラオケ市場。「カラオケの鉄人」を運営する鉄人化計画は、1999年創業の後発組ながら、首都圏を中心に57店(8月時点)を出店し、来2013年8月期には、売り上げ規模100億円乗せが射程内に入った。ただ、すでに国内カラオケ市場では、先発組の同業大手が主要都市の駅前などの好立地を押さえている。その中で鉄人化計画が打ち出そうとしているのが、オリジナル楽曲配信の強化だ。
鉄人化計画は昨年、「ニコニコ動画」を運営するドワンゴなどとの資本・業務提携を発表。今年6月には韓国の通信カラオケメーカー最大手のKumyoung(クムヨン)社と組み、同社製最新機器をカラオケの鉄人全店に導入することを打ち出した。ドワンゴとの提携ではボーカロイド系、Kumyoung社からの最新機種導入ではK−POPや韓流の、楽曲や映像コンテンツを充実させようというのが、鉄人化計画の狙いだ。
鉄人化計画の創業者でもある日野洋一社長に、海外展開や地方出店の可能性も含めた今後の戦略を聞いた。
--カラオケ業界の現状と、今後の鉄人化計画の方向性は。
業界全体では年間4000億円ぐらいのマーケットで横ばいが続いている。これが大きく縮小したり拡大したりすることは考えにくく、安定した状況が続きそうだ。ただし、出店攻勢をかけてくる同業大手が多く、供給は過剰ぎみ。カラオケ店運営はロケーションビジネスなので、先行して良い立地を押さえている同業大手に比べ、当社のようにこれから好立地を狙っていく後発組にとっては、競争が厳しい。
その中で採るべき方策は、供給調整か、何らかの形で差別化を図っていくかのどちらか。鉄人化計画としては、独自のマーチャンダイジングによる差別化で、生き残りをかけていくほうを選ぶ。意識しているのは、どんな楽曲を歌えるかという「コンテンツ」の問題だ。その意味ではカラオケ機器メーカーの動向をつねに注視している。
■アニソン、ボーカロイドから、千葉県の中学の校歌まで独自配信
--鉄人化計画はメーカーから通信カラオケ機器を導入して楽曲の配信を受ける一方、アニソン(アニメソング)、ボーカロイド(ヤマハの開発した合成音声技術、転じて合成音声で歌う架空アイドルの総称)、インディーズ、ヴィジュアル系など一部の楽曲についてはオリジナルコンテンツを独自に配信している。そこでメーカーと競合することはないか。
機器メーカーと競合することはない。メーカー業として同業他社にコンテンツを販売しているわけではなく、あくまでオペレーター(カラオケ店運営業者)として、自ら作ったコンテンツを自店で歌えるようにすることで差別化を図っている。