土光敏夫、松下幸之助に匹敵する経営者・西山弥太郎--『鉄のあけぼの』を書いた黒木 亮氏(作家)に聞く

土光敏夫、松下幸之助に匹敵する経営者・西山弥太郎--『鉄のあけぼの』を書いた黒木 亮氏(作家)に聞く

戦後の廃墟の中、銑鋼一貫に進出し、灼熱の鉄づくりに命を懸けた男がいた。その知る人ぞ知る川崎製鉄(現JFEスチール)創設者・西山弥太郎(1893~1966)の熱き生涯は、「スティーブ・ジョブズに通じる」という。

──今、なぜ西山弥太郎なのですか。

土光敏夫、松下幸之助、あるいは盛田昭夫や本田宗一郎らに匹敵する、戦後の傑出した経営者なのに、知られていない。西山弥太郎は表に出るのを嫌い、自分を誇示することがなかったからだろう。日本人なら必ず知っておくべき人物なのだ。

西山の経営手法は今の先進経営者にも通ずる。ある意味わがままなのだが、自分がやりたいようにしてモノづくりをやる。この点ではスティーブ・ジョブズとも通じる。西山の得意技について、こんな逸話がある。部長、役員から投資案件の説明をされた際、話を絶対さえぎらない。そして聴き終わった後、「話はわかった。しかし会社にはカネがない。半分の金額でやれ」と、必ず言ったという。

──ジョブズ流?

多くの人がこう述懐している。西山に注文をつけられて、初めは無理難題を押し付けられたと思うものの、やってみるとそれでもできる。本人はもともと可能との胸算用があったうえでやれと言っていたのではないか、と。モノづくりを手掛ける優れた経営者の資質には、普遍的な共通項があるのかもしれない。

同時に、指示を受けた従業員が懸命に課題をこなそうとするのは西山が人物として慕われていたから、という見方もある。ヒラの工員があいさつした際、その工員が頭を上げたときに西山はまだ頭を下げていた、というエピソードもある。社員一人ひとりにつねに敬意を持って接し、それが社員の心にしみ渡っていたとも解釈できる。

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