「コミュ力だけ就活生」は、もう通用しない 学生の「地道な努力」を、いかに評価するか

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たとえば、経営学の授業に力を入れていたという学生に対しては、「経営学って、要するにどういう学問なのですか?」と質問してみます。「力を入れていた」と言う以上、学生は何らかの回答をするでしょう。その回答が腑に落ちれば、後者のコミュ力を持った学生であると思って、まず間違いありません。

もっと言えば、ビジネスパーソンであれば「経営学」についてはそれなりの知識があるかと思いますので、いっそのこと、まったく想像がつかない名称の授業について質問してみるのもいいでしょう。その際、「私はまったくわからないのですが」と前置きすれば、「相手に合わせて説明するスキル」を判断することもできるでしょう。

この質問の意図は、あくまでも後者のコミュ力を知ることですので、その授業内容が直接仕事に関係あるかどうかは、ある意味どうでもいいのです。法・経済・経営系学部の学生が有利で、文学系学部の学生が不利になるということもありませんので、学生の素の力に、より迫ることができると言えるでしょう。

地道に努力する力

成績表(履修履歴)を使った質問をすることでコミュ力に騙されなくなる2つめの理由が、「より長期的な行動について知ることができる」というものです。

「ガクチカ」についての回答は、どうしてもエピソード重視と言いますか、「ある短い期間において、どのような努力をしたのか」に偏る傾向があります。「サークルで問題が起きて……」「文化祭の準備で……」「アルバイト先のトラブルを……」などが学生の回答の定番であることを考えれば、よくわかっていただけるかと思います。

このような回答からは、学生の「瞬発力」がわかります。「モチベーションが高い状態での行動特性」と言ってもいいかもしれません。これは学生の能力の「最大値」を表わしていると考えられるため、学生を見極める上で、非常に重要な情報です。

しかし、仕事は必ずしも、モチベーションが高い状態だけではありません。嫌なこと、苦手なことはありますし、仕事によってはそれこそ何年もの長期間にわたる努力が必要なことも珍しくありません。「モチベーションが低い中での、長期間にわたる地道な努力」もまた、仕事をする上では非常に重要なのです。

もうおわかりですよね。成績表(履修履歴)を活用した面接は、「モチベーションが必ずしも高くない状態で、地道な努力ができるかどうか」が見極めやすいのです。

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