【産業天気図・精密機器】円高、北米景気悪化の逆風あるが、好調維持。07年度後半、08年度と「晴れ」続く

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円高と北米の景気悪化が影響し、精密機器業界にも若干の減速感が見られはじめたが、デジタルカメラ、事務機などの主力事業は好調で、07年度後半、08年度ともに「晴れ」が続く見込みだ。
 精密業界は売上高に占める海外比率が高く、ここ数年は円安の増益効果を享受してきたが、目下は米国のサブプライム(信用力の低い個人向け住宅融資)問題に端を発する円高が進行中。07年度後半からは、業界各社の業績を後押してきた円安の恩恵は剥落することとなりそうだ。
 たとえば売上高の海外比率が78%と高いキヤノン<7751>は、今年度の07年6月中間期は、円安により営業利益で合計308億円の増益効果があったが、同第3四半期(7~9月)では26億円の減益要因となった。同第4四半期(10~12月)も為替要因としては減益ないしは均衡圏が予想され、今までのように為替の恩恵による大きな増益効果を期待することはできないだろう。
 ただし、各社の07年9~12月期以降の想定レートは、キヤノンが対ドル115円、対ユーロ160円(07年12月期第4四半期の想定レート)、リコー<7752>が対ドル115円、対ユーロ155円(08年3月期下期の想定レート)、富士フイルムホールディングス<4902>が対ドル110円、対ユーロ150円(同)と保守的な見込みで、対ドルで多少の円高が進んでも、対ユーロの円安効果によりある程度は相殺できる備えができている。今後は為替の上乗せ効果がなくなるとしても、為替の影響によって増益から一転減益となるほどの大きな振れはないだろう。
 もう1つ、精密業界で懸念されるのは北米の景気動向だ。デジタルカメラを製造、販売するキヤノン、ニコン<7731>、オリンパス<7733>や、腕時計を主力とするシチズンホールディングス<7762>、セイコーホールディングス<8050>など、コンシューマー製品を手がける各社については、北米の消費動向の先行きが気掛かりなところ。各社とも「足元の10月はまだ影響は出ていない」と口をそろえるが、一年の売上高のかなりの部分を占める年末のクリスマス商戦でどれだけ影響が出てくるかは現時点ではまだ不透明だ。石油、鉄、銀などの原料高もあり、精密業界を取り巻く環境が一時期よりは厳しさを増してきていることは事実だろう。
 しかし、それでも各社の業績自体はおおむね好調に推移すると見ている。カメラ映像機器工業会によると、08年のデジタルカメラの出荷台数は07年比7.1%増の1億30万台、高収益のデジタル一眼レフカメラは同15.6%増の821万台となる見込み。07年に比べれば伸びは鈍化するが、それでもまだ十分収益貢献が期待できそうだ。事務機も、モノクロ複写機のカラーへの切り替えにより各社とも安定成長が続く予定。加えて、各社ともコスト削減や在庫管理のたゆまぬ努力を続けており、多少の逆風には耐えられるよう足腰を鍛えてきている。若干の減速はあっても、大きな波乱はないだろう。
【桑原 幸作記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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