パズドラとモンストが追い落とされない理由 その文化と歴史を理解しないと本質を見誤る

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ミクシィの採用ページに、その背景の一部がインタビューとして公開されていますが、モンストのプロデューサーである木村弘毅氏は、実は前述のmixiゲームのプラットフォームも担当していた人物です。

mixiの良い時期も悪い時期も経験している木村氏が、モンストを開発する際に軸としたコンセプトが実際の友達と「多人数で遊ぶ」ことでした。

モンストは一発芸的なヒットではない

実はミクシィのゲームにおける中心的価値観は、mixiゲームにおいてもモンストにおいてもぶれていないわけです。つまり、モンストは、「リアルの友人関係」「多人数で遊ぶ」という自らのサービスのコアの可能性を信じ続けたミクシィの社員だからこそ生み出せたゲームということがいえます。

モンストのプロデューサーであるミクシィの木村弘毅氏(ミクシィ採用ページより)

誤解を恐れずにいえば、モンストは、初期のソーシャルゲーム競争に敗北したミクシィの執念が生んだ新しい本当の意味でのソーシャルゲームといえるかもしれません。そういう意味で、モンストが窮地に陥ったミクシィがたまたま当てた一発芸的なヒットと考えている人は本質を見誤っています。

モンストは「リアルの友人関係」を重視し、「多人数で遊ぶ」ということの価値を信じているミクシィだからこそ生み出せたゲームであり、ミクシィからモンストが生まれたのは実は必然と言えます。

そのモンストの勢いを象徴する一つのデータが、キーワード検索の傾向から人気度を測るGoogleトレンドにあります。2014年10月まではパズドラが上回っていましたが、その後はモンストが逆転。今もモンストが圧倒しています。

一見パズドラとモンストは同じようなゲームに見えるかもしれませんが、モンストはスマホゲームにリアルの友人関係を組み合わせたパズドラとは違うジャンルのゲームということができます。

最近ではパズドラも友人と同時に遊ぶ機能を追加するなどしてモンストを参考にしているようですし、最終的にはゲームの世界は流行り廃りがありますから、永遠にパズドラとモンストの時代が続くことはありえませんが。

実は一見同じような存在に見えるスマホゲームにおいても、大ヒットの影にはその会社の文化や歴史が大きく影響しているということにも注目してみると、違った風景が見えてきます。

徳力 基彦 noteプロデューサー、ブロガー

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とくりき もとひこ / Motohiko Tokuriki

NTTやIT系コンサルティングファーム等を経て、アジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。代表取締役社長や取締役CMOを歴任し、現在はアンバサダープログラムのアンバサダーとして、ソーシャルメディアの企業活用についての啓発活動を担当。note株式会社では、noteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるブログやソーシャルメディアの活用についてのサポートを行っている。
個人でも、日経MJやYahooニュース!個人のコラム連載等、幅広い活動を行っており、著書に「顧客視点の企業戦略」、「アルファブロガー」等がある。

 

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