ボーイングとエアバスに見る自動運転の現実 人間の意図を機械はどこまで理解できるのか

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ヒューマンエラーによる交通事故を減らすために自動運転が解決策のひとつになる。実現に向けて、HMIが果たすべき役割とは?
自動運転を実用化するうえで特に重要なテーマが人と機械の境界を扱う「HMI(Human Machine Interface/Interaction)」の研究である。自動車メーカー各社もその重要性を認識し、優先すべき研究テーマに掲げているのだが、私たち消費者にはその本質的なところが見えにくい。そこで今回は人間機械共生系を専門とする筑波大学副学長の稲垣敏之氏をゲストに迎え、HMIの果たすべき役割を聞いた。2回にわたって、その内容をお届けする。

 

清水 和夫(以下、清水):交通事故の90%以上はヒューマンエラーに起因するといわれています。車を愛する者としては、それだけ多くの人間が間違いを犯すのならば、車には人間に失敗させない仕組みを持ってほしい。そのひとつの解が自動運転ではないでしょうか。しかし、自動運転車といえども機械ですから、操る人間にとって扱いやすいものでなければなりません。

稲垣 敏之(以下、稲垣):私が研究しているヒューマンマシンシステムは、まさに人間と機械のかかわりを扱っています。人間と機械のかかわり方は非常に多様で、「人間にはできないことを機械が補う」「人間がよりよい成果を出せるように機械が手助けする」「人間の負担を機械が軽減する」など、さまざまなタイプが考えられます。

人間が運転中に事故を起こすときは、何かしら危険があるのに注意を向けていないことがほとんどです。そうならないように、人間の気づいていない「何か」を車が教えてくれるとしたら、これも機械による人間の支援だと言えます。

清水:最近はコンピューターが人間の行為を支援してくれる場面が増えてきました。自動運転は比較的新しい領域ですが、航空業界ではすでに自動操縦(オートパイロット)が当たり前のように使われていますね。

稲垣:1900年代初頭に登場した航空機は当初、操縦がすごく難しかったんです。ほんのわずかなタイミングを間違えるだけで、機体の安定性が失われたため、パイロットはつねに緊張を強いられていました。その後、オートパイロットの研究が進み、第二次世界大戦後の航空機には基本的にオートパイロット機能が備わるようになりました。

とはいえ、初期のオートパイロットは機体の姿勢の制御のみです。今はコンピューターが、その日の気象条件や機体重量等を勘案して目的地まで最も効率のよいフライトプランを計算することが可能です。しかも、いつどのような操作をすればいいのかを教えてくれますし、実際に操縦もしてくれます。

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