葬式は必要か、不要か――ブラックボックス化した葬儀 業界に一石を投じる動きも
厚生労働省の「人口動態統計」によると、2011年の日本の死亡数は125万3463人。ざっと1000人に9.9人の比率である。正確な統計はないが、これら故人のすべてに「葬式」が行われているかと言えば、もちろんそんなことはない。いまや大都市では、孤独死のニュースは、珍しくなくなった。
この背景には、核家族化による人間関係の希薄化など、さまざまな要因が挙げられる。加えて、インターネットなどの普及によって、価格をはじめ、従来ベールに包まれていた葬式の実態が透明化されてきたことも大きい。
日本消費者協会によると、全国平均の葬式費用合計は199.9万円。およそ200万円弱だ(10年11月実施のアンケートより)。うち祭壇や棺などの一式費用が6割を占めている。とはいえそれも、宗旨・宗派や地域によって異なり、一概には言えない。
「インチキな葬式が多い」と島田裕巳氏が言う実態
『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)がベストセラーとなった宗教学者の島田裕巳氏は、「今の葬式にはインチキなものが多すぎる」と断言する。1時間かかるお経が、葬儀会社の指示で10分で終わらせる例もあるなど、本来の供養とはかけ離れた様子を訴えている。
こんな興味深い見方がある。
『面白いほどよくわかる神事・仏事のしきたり』(日本文芸社)などの著書がある渋谷申博氏によれば、現代のいわゆる葬儀屋が出てきたのは、実は明治時代以降だという。
「庶民の場合、それ以前は、葬式組と呼ばれる近所の人たちを中心に、地域で行うものだった。お坊さんは、お経を読んでもらうため、お手伝いとして呼んだ程度」(渋谷氏)。それがいつの間にか、葬式自体が商売となり、スタンダードを押しつけられたというのだ。
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