Airbnbはなぜ、自治体と「仲直り」したのか 新興企業に押し寄せる規制リスクとは

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Airbnbが自治体に対する態度を変えたことについて、シンクタンクの情報技術・イノベーション財団のロブ・アトキンソン代表は「Airbnbが少なくとも自治体に対して柔軟な姿勢を見せなければ、自治体は一歩も譲らないだろう」と言う。

広報担当のリヘインは、Airbnbのメッセージは矛盾していないと主張する。有権者を動かすことができるというのは、民泊を受け入れないホテル業界に対抗する意味合いだったという。

「当社は自治体と提携したいとずっと言ってきた」とリヘインは言う。「サンフランシスコのケースが証明したように、ホテル業界がホームシェアリングのビジネスの根幹を脅かすなら、私たちのコミュニティは戦い、そして勝利するだろう。でも本来は、私たちは都市を愛する者でいたいし、ホテル業界と争いたいとも思っていない」

利用者の匿名データを当局に提供

Airbnbのコミュニティ協定に盛り込まれている利用者の情報提供は、複数の自治体が同社に長いこと要求していた。大量の空室を貸し出すなど違法な営業を取り締まるためだ。

ニューヨーク市ではそうした問題が昨年、大きく取りざたされた。5月には長期に及んだ法廷闘争を経て、Airbnbは市内のホストの匿名データをニューヨーク州検事総長のエリック・シュナイダーマンに提出することに同意した。シュナイダーマンは当時、同社のサービスを利用する「違法ホテル」を捕えることが最終目的だと語っていた。

Airbnbのコミュニティ協定についてシュナイダーマンは、「よき企業市民であるかのように見せる見え透いた手だ。Airbnbは行動を改めるのに必要な情報とツールをすべて持ち合わせている。それを実行するまでは今回のプレスリリースを真剣に受け止めるべきではない」と言う。

同社は、バルセロナやベルリンなど国外でも、こうした規制に関する問題に直面している。

オンデマンド・エコノミーの代表格であるAirbnbやUber(ウーバー)などの企業は、評判に対するリスク対応ができていると、ハーバード・ビジネススクールの研究機関フォーラム・フォー・グロース・アンド・イノベーションのディレクター、デレク・ヴァン・ベヴェルは言う。「彼らは今、規制のリスクに関する警報を察知している」

(執筆:Mike Issac記者、翻訳:前田雅子)

(c) 2015 New York Times News Service

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