「北極海航路」の研究投資は予算の無駄遣いだ コストも安定性も多様性も期待できない
政府は北極海航路の開発を決定した。10月16日の総合海洋政策本部会合では「官民が連携して利活用に向けた検討を積極的に行うべき」とされている。11月14日には「北極圏用の観測船を作る」といった報道もあった。
これは欧州との輸送距離の短縮と北極海の資源輸入を期待したものだ。日本からロッテルダムまでの経路はマラッカ・スエズ経由の南回りは総距離2.1万キロである。これがベーリング海峡・スカンジナビア半島周りの北極海航路であれば1.3万キロと距離は3分の2に短縮される。また、手付かずであり、売り先の少ないロシア北極圏の資源を安価に確保できる目論見もある。
だが、この北極海航路に現実味はない。その理由は次のとおりである。
安価でもないし安定的でもない
まず、コストと安定輸送で大きく不利である。この点で北極海航路は南回り航路にかなわず、実用性はない。
輸送距離短縮による効果を期待するのも間違いだ。北極海をショートカットしても、海上輸送コストはそれほど節約はできない。船舶の輸送コストについては、大雑把に言うと半分は港湾における搭載・卸下費用である。輸送経路が3分の2となり、35%ほど距離を短縮できても、実際の輸送コスト削減が距離に比例するわけでもない。
逆に増加するコストもある。船舶が北極海を通るには、耐氷グレードの船舶が必要となる。温暖化し開氷面が増えたとはいえ、北極海に結氷や流氷がなくなったわけではない。多少ぶつかっても損傷しない丈夫な専用の商船が必要となるが、その建造・維持コストが増加する分、通常商船が使える南回り航路に対して不利だ。
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