4代目プリウスのデザインはカッコ悪いのか この外観にはれっきとした理由がある

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「ここは空力とは直接絡んではいなくて、プリウスらしいミニマムな部品配置を、流れるような造形で組み合わせて、低重心を強調することを心がけました。

ヘッドランプを下に伸ばしたのは、フォグランプにかけてS字を描くようなラインを強調したかったからです」(児玉氏)

従来のデザインを踏襲し、新しさを出した

車体後部のブレーキランプやウインカーなどのリアコンビネーションランプも似たような考えで造形している。縦長というプリウスのアイコンは踏襲したうえで、新しさを出した。特に今回は夜の点灯時の表情にこだわっていて、台形を描くことで安定感を表現している。プリウスの「P」をモチーフにしたのかと思ったら、そうではないようだ。

リアスタイルも特徴的だ(撮影:尾形 文繁)

前後ともサイドの面をギリギリまで延ばした処理は、3代目で初導入した、空気の流れを整えるためのものだ。ここでエアロダイナミクスの基本性能を確保したうえで、児玉氏がランプまわりで個性を演出し、それを北沢氏が空力的に整えていったというのが制作のプロセスだそうだ。

もうひとつ目につくのは、サイドウインドーとリアウインドーがつながるリアクォーター。筆者を含めて、トヨタが昨年末に世界で初めて市販にこぎつけた燃料電池車「MIRAI」(ミライ)」に似ていると思う人が多いかもしれない。これは児玉氏によれば、トヨタの上層部から「MIRAIに似せろ」という指示はなかったそうだ。

実は、4代目プリウスとMIRAIの形状が似ているように感じるのは、それ以上の理由があった。

「視界を良くするために、リアウインドーの左右を広げたのですが、そうするとボディ色のピラーを脇に入れることが難しくなった。そこでブラックアウトしながら特徴を出すという方向性で仕上げていきました。空力的にも上から見て水滴型を形成しており、有利な形状になっています」

新型プリウスのスタイリングが機能重視であり理詰めの産物であることが理解できただろう。インダストリアルデザインとは本来そういうものだ。空力や使いやすさなど、さまざまな機能を高度に両立させ、伝統のトライアングル・シルエットを継承したうえで、目標に掲げた走りの良さもしっかり見た目で表現している。

「カッコ良い」「カッコ悪い」の判断は個人の自由だが、新型プリウスのエクステリアデザインが、ここまで数多くの要求をまとめあげた結果であることを知れば、「カッコ悪い」と思った人の第一印象も変わってくるかもしれない。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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