向谷実氏の新幹線シミュレーターが凄いワケ CGではなく実写映像や音にこだわり世界へ
列車の運転を映像や音で疑似体験できる「シミュレーター」。ゲームだけでなく実際の乗務員教習などにも使われる装置だが、なかでも実写による映像とリアルなサウンド、実物に忠実なシステムで知られるのが、鉄道ファンとして知られるミュージシャンの向谷実さん率いる「音楽館」が手がけたシミュレーターだ。20年前にパソコンゲームから始まったその技術は、プロの世界でも導入され、今では世界の鉄道関係者から注目を集めるまでに発展した。
今年7月に東京で開催された「UIC世界高速鉄道会議」。その会場で、海外のメディアや鉄道関係者から特に注目を集めていた展示がある。音楽館が開発したE5系新幹線のシミュレーターだ。
2014年秋にドイツ・ベルリンで開催された国際鉄道技術見本市「イノトランス」のJR東日本ブースに展示されたのを皮切りに、マレーシア、インド、シンガポール、アメリカなど世界各国を回り、高速鉄道会議でも目玉となった。
CGではなく実写にしたのがカギ
E5系のシミュレーターは、JR東日本の新幹線で使われている保安装置「DS-ATC」の動作も忠実に再現。地震発生時の非常ブレーキなど6つのシナリオを搭載するほか、日本語・英語の2言語に対応した優れものだ。イノトランスでは2時間待ちになるほどの反響を呼び、フランスの高速鉄道TGVやドイツのICEの運転士も「シンカンセン」の運転を体験したという。
なんといっても海外の関係者から注目を集めたのは「映像が実写であること」だった。コンピューターグラフィックス(CG)によるシミュレーターでは難しい、長距離の路線を再現できるためだ。
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