ブラッターさん、賄賂もらったことありますか 「FIFA腐敗の全内幕」を読む
FIFAの汚職についてはすでにニュース等で何度も見聞きしているし、多かれ少なかれ「この手の組織」に黒い側面があることも想像に難くない。だから腐敗があったこと自体、それほど驚くようなことではないのかもしれない。
だが本書『FIFA 腐敗の全内幕』を読んで本当に驚いたのは、なぜこれほどまでの長期間、腐敗を止めることが出来なかったのかということである。そこには地下組織のような腐敗の構造と、世界各国に散らばった関係者をパス回しのようにつなぐ「沈黙の掟」が脈々と息づいていた。これらを読むかぎり、今まさに捜査中の案件についても決定打を放つことが難しいのではないかと感じたほどである。
FIFAを牛耳るブラッター氏
著者のアンドリュー・ジェニングス氏は、過去半世紀にわたり、さまざまな組織犯罪のスクープを手にしてきた人物である。1980年代に汚職警官、タイの麻薬取引、イタリアのマフィアを調べあげた後、90年代に入ってからはスポーツ界に目を向け、IOCやFIFAに狙いを定めたという。
組織犯罪シンジケートについて調べた経験が、そのままFIFAを調査するためのウォーミングアップになるーーこれ自体、驚くべきことと言えるだろう。FIFAを牛耳るブラッターの一味は、強く冷酷なリーダー、絶対的な序列、メンバーに対する厳しい掟、権力と金という目標、入り組んだ違法で不道徳な活動内容という、組織犯罪に必須となる要素を全て兼ね備えていた。
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