VWとBMW、排ガス規制問題「不正」の境界線 「二兎を追う」は都合がよすぎた

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前代未聞の不正事件。先行きは予断を許さない(写真:ロイター/アフロ)

フォルクスワーゲン(VW)が、排ガス規制を逃れるためディーゼル車に不正なソフトウエアを搭載していた問題が発覚してから約2週間が過ぎた。

「もっと早く、記事を書くべきでは?」と思われるのは承知で、筆者は黙々と取材を続けてきた。なぜなら、あまりにも青天の霹靂といえる出来事だったからだ。いささか個人的なことになるが、筆者は今回の事件が明るみになる直前、9月15日のプレスデーからドイツで始まったフランクフルトモーターショーを取材していた。

今年、VWは上半期の販売台数が504万台に達し、同時期に502万台を販売したトヨタ自動車を抜いて世界トップとなった。VWは今年5月にフェルディナント・ピエヒ前監査役の退任劇が繰り広げられたものの、お膝元で開かれたフランクフルトモーターショーでは、マルティン・ヴィンターコルン前会長を筆頭に盤石の経営体制を築きつつあることを見せつけたばかりだった。

ところがその翌日、筆者がアメリカに飛んで一晩寝て起きたら、アメリカ環境保全局(EPA)の指摘によって発覚した今回のスキャンダルが、米メディアのトップニュースを飾っていた。

世界一へと躍進したきっかけ

今でこそ、トヨタ、ゼネラル・モーターズ(GM)と肩を並べ世界一を競う巨大自動車メーカーとして知られるVWだが、2007年に前会長のヴィンターコルン氏がCEOに就任した際には年産620万台半ばに過ぎず、当時、年産900万台周辺で世界一を争っていたトヨタとGMには大きく離された存在だった。

そんなVWが世界一を競う自動車メーカーへと躍進したきっかけは、リーマンショックだった。米国経済の急減速に伴ってトヨタ、GMが足踏みしている間隙を縫い、北米市場への依存が低かったVWが中国と南米を中心に成長を果たした。2011年以降は三つ巴の戦いとなった。

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