中古マンション購入は「ヴィンテージ」を狙え うわべより建物の骨格と空間に目をつけよ

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本来、建物は30年、40年ぐらいではびくともしないものだ。木材は年月が経つにつれ乾燥して強くなり、コンクリートも水分が蒸発すればするほど強度が増していく。消費財ではなく、年月を重ねるとともに「いい感じ」に進化し、色艶が良くなるヴィンテージはこれからの中心となるだろう。

都市部では新しいタイプのヴィンテージマンションも登場している。
主役は、マンションの外観やエントランスにさほどこだわらない若い世代だ。これまでは、親戚や友人知人に自慢できるからという理由で、共有部分は可能なかぎり豪華な方がいいと考える人が多かった。しかし、部屋に入った瞬間に自分たちの世界があれば十分で、人に見せびらかすために住んでいるわけではないと割り切って考える新しい層が台頭している。

近くのカフェや公園もマンションの魅力

こうした層は1階に雰囲気の良いカフェがあるというような都市との関連性も重視する。建物自体の価値が古ぼけていても、エントランスが格好悪くても気にしない。近くに雰囲気の良い公園やカフェがあれば、それらがマンションそのものの価値になるという考え方だ。

これは、シェアハウスの発想にもよく似ている。都市の諸機能を活用しながら、エントランスや外装仕様にとらわれず、気負いなくリノベーションなされたマンションは、彼らにとってのヴィンテージマンションなのである。都市部にある比較的安価な古いビルを何人かで共同購入し、フルリノベーションするのも面白い選択肢だ。ビルに住むこともできるし、そこを仕事場として活用してもいい。商業用の空間として賃貸に出すのもいいだろう。

具体的には、蔵前や神田あたりの古い商業エリアにある商業ビルを一棟購入し、下でゲストハウスやカフェを経営し、上のフロアを皆でシェアしながら暮らすというような方法だ。これまでは住む場所と働く場所が別々なのが当たり前だったが、それらを一体化して都市に暮らすのである。

ニュートラルなつくりのビルは住宅にも商業にも対応がしやすい。プロにみてもらえば、耐震性や強度は一目瞭然だ。リノベーションに向いたビルは流動性が高く、古くても価値が高い。このようなビルもまた、新たなタイプのヴィンテージのひとつといえるだろう。

黒崎 敏 建築家

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くろさき さとし / Satoshi Kurosaki

1970年石川県金沢市生まれ。1994年明治大学理工学部建築学科卒業後、積水ハウス株式会社東京設計部で新商品企画開発に従事、FORME一級建築士事務所を経て2000年APOLLO設立。2008年株式会社APOLLOに改組。現在、代表取締役、一級建築士。「グッドデザイン賞」「東京建築賞」「International Space Design Award」グランプリなど国内外の受賞歴多数。都市住宅を中心に国内外で設計活動を行う。
 

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