タモリの半生には日本戦後史が詰まっている 糸井重里と近藤正高が語り尽くした!
糸井:近藤さんの『タモリと戦後ニッポン』は間違ってないんですよね。
近藤:おお、それはどういうことでしょうか。
糸井:こういう本って普通、よく言えば筆の勢いで、あるいはウケを狙ってより面白いほうに振っていったり、間違いを書きがちなんですよね。それがこの本ではものすごく注意深く、物事と物事の距離感がすごーくきれいに整理されて書かれている。
近藤:ありがとうございます。点から線、線から面にして、立体的に見せようというのは書くにあたってかなりこだわったところです。
糸井:福岡で(まだデビュー前の)タモリさんが山下洋輔さんたちと会ったとき(「本」編集部注・1972年)についても、あそこでどういう出会いがあったかっていうのをしつこく書いてて、ものすごくおかしかった。たぶん近藤さんの資質なんだと思うんだけど、みんな記憶が定かでない、それを照合するとここだけは確かなんだとか、あそこの描き方、僕はとてもおもしろかったですね。だから、僕が事実として多少知ってる部分でも、いやな感じがしないんです、まったく。知らないことについては「そうかあ」と思うんです。
近藤:山下さん自身、タモリさんとの出会いについては、あとでご本人に確認するなどかなり検証した、と聞きました。
「タモリはサラリーマンみたい」
糸井:この本で、近藤さん自身の意見を書いてる部分というのはほとんどないですよね。せいぜい高田文夫さんが「タモリはサラリーマンみたい」と言っていて、「自分もそう思った」と書いているところぐらいかな。
近藤:そうですね。意見をストレートに書くんじゃなくて、事実をどう並べるかというところで自分の見方はこうなんだと示したというか。それは、自分の生まれる前とか物心つく前の出来事も多いので、そうなったというところもありますね。