パート主婦が消える? パート労働者への社会保険適用拡大の是非
政府が3月末に提出した法案によると、2016年4月以降は、週20時間以上働き、月額賃金が7.8万円以上(年収94万円以上)のパート労働者に対し、正規労働者(以下、正社員)と同じように厚生年金や健康保険が適用される。新たに適用対象となるのは、従業員501人以上の会社に勤務する、勤務期間1年以上のパート労働者。全国で約45万人が対象になると見込まれる。
パートやアルバイト、派遣社員などの形態で働く、いわゆる「非正規労働者」は、10年に全国で1755万人(年平均、総務省「労働力調査」)。この数は、全雇用労働者約5100万人の34%を占める。もはや非正規労働抜きに日本の雇用や経済を語れなくなっている。
パート労働者のうち、週30時間以上働く人は、正社員と同じように事業主の保険料負担があり、相対的に給付が手厚い厚生年金や健康保険の対象になっている(図の(2)、以下被用者保険)。しかし、30時間未満の人は、国民年金や国民健康保険などの地域保険(同(1)と(3))に加入しているか、正社員の被扶養者(同(3))のいずれか、と異なる扱いを受けている。
今回の適用拡大は、労働時間が正社員より短いというだけで、地域保険や被扶養者のカテゴリーに入っている人を、被用者保険に移す動きだと評価できる。
当初の民主党案では、週20時間以上働く人全員(約370万人。図では、正社員の2分の1の線より右側すべて)へ対象を拡大することが検討されていた。しかし、企業や医療保険の負担増加を考慮して月収基準が設けられ、適用拡大の範囲は45万人にとどまった。
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