AV男優は、きわめて専門性の高い職業である

プロは日本に数十人程度しかいない!

強じんな身体能力が求められる職業だ(写真:wavebreakmedia / PIXTA)
世界最大のセックス産業市場にありながら、過酷な労働条件下で“消費”される日本のAV男優。『AV女優の社会学』(青土社)の著者である鈴木涼美が、実体験を交えながら男優たちをフィールド・リポートする。

 

当記事は「GQ JAPAN」(コンデナスト・ジャパン)の提供記事です

先日、深夜に所用があって終電で横浜に行った。用事はすぐに終わり、呼び出した友人の仕事が終わるまで伊勢佐木町に新しく出来ていたドン・キホーテで暇つぶしをしていたら、私がいた化粧品売り場に同じような感じで暇をつぶしているキャバ嬢3人組がなだれこんできて、どうやらその日の営業中にやってきた一見のグループ客について話に花が咲いていたようで、彼女たちのうち最も髪の毛を派手にセットした背の高い1人が「あのAV男優系の人がでも一番マシだったよね」と言うのが聞こえた。色黒でマッチョ、目がギラギラして声が太い男性の姿がすぐに脳裏に浮かんで、私は少し愉快だった。

私はかつて伊勢佐木町からすぐのマンションに住み、そこから代々木にあるAVプロダクションに通うAV女優だった。月に1度、多くは2日間かけておこなう撮影の現場には、毎回数人のAV男優が入れ替わりでやってきて、1~2シーンを撮った後には颯爽と次の現場に向かっていった。同じ出演者ではあるものの、AV女優とは現場での立場がまるで違い、AV男優はむしろ監督やカメラマンと似た位置の制作スタッフのような扱いで、現にAV男優と監督を兼ねる者も多かった。

AV女優が月に1度や週に1度、VTRの撮影に参加するのに対し、AV男優は毎日いくつもの現場を掛け持ちして渡り歩く。その恒常的な人手不足は当然、AV男優に求められる技術や身体能力の高度さにも関係するが、やはり根底に動機の見つけにくさ、モチベーションの維持の難しさがあるように外部からは見える。

不可解で不思議な存在

色黒マッチョで巨根、そんな強く分かりやすい世間的イメージがある一方、私には彼らは不可解で不思議な存在に思えた。例えば、あるベテランAV男優で時に監督業も務めるNは、アクション映画の俳優や制作に興味を持ち助監督などをしていた時、知り合いの勧めでAV制作のバイトに行き、そこでたまたま男優役をやることになり、気づけば1日3現場は掛け持ちする売れっ子になっていた。日焼けサロンに通い、ジムに通い、黒光りする固い肉体を作り上げた。

現場にやってくると監督と出演シーンを軽く打ち合せた後、知り合いスタッフなどと談笑し、シャワーを浴びて準備を整え、女優がメイクルームから出てくると挨拶し、撮影が始まればベテランの貫禄でリードしてすすめる。射精してシーンの撮りが終了すると、女優の後にシャワーを浴び、現場を去っていく。

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