イランは米紙支局長釈放で憎しみに終止符を 核合意が成立した今こそが絶好の機会だ

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レザイアン氏は先週、秘密法廷で有罪を言い渡された。何の容疑でどの程度の期間拘束されるのかは不明だが、判決を受けたのは確かだ。

現在は私の夫であるシェーンと、友人のジョシュは2年あまり収監された後、スパイ罪で8年間の禁固刑を言い渡された僅か2週間後に釈放された。2009年にはイラン系米国人のジャーナリストであるロクサナ・サベリ氏が3カ月あまり収容された後に8年の判決を受けたが、その後1カ月足らずで釈放された。

どうやら、以下のようなパターンのようだ。不法な逮捕、スバイ容疑での告発、長々しく人目を引くような投獄、ショーとしての裁判、刑の宣告、そして「人道主義的な」釈放、となる。

さて、イラン政府はレザイアン氏の釈放を準備しているのだろうか?

裁判が政治的な劇場であるのは同氏にとって良いことだ。判決自体に意味はないのだから。しかし、彼が自由を得るには依然、高さの変わりやすいハードルが数多くある。

交渉を有利にする切り札に

イラン政府にとって、米国人を収監するのは安全保障の上で重要だ。銀行内にある資金と同様、交渉を有利にするのに使える切り札になるのだ。

人質の拘束期間が長くなりすぎると、その価値は減る。同国政府に対する釈放への圧力や非難が臨界点に達すると、価値あるものから厄介なものに転じるのだ。かくして釈放となる。

イラン政府にとっては、政治的人質の釈放のタイミングこそがすべてなのだ。私が釈放されたのは、イランのアフマディネジャド大統領(当時)が国連総会出席のためニューヨークを訪問する数日前で、人権侵害に対する激しい非難を和らげるのが目的だった。そしてその約1年後にシェーンとジョシュが釈放されたのは、国連総会の直前でラマダン明け直後というタイミングだった。

しかし、国連総会もラマダンも終わってしまった。さらに重要なことには、核開発を巡る西側との歴史的な合意が均衡状態を完全に変えてしまった。イランの議会や強硬主義者でさえ、この合意はつぶせない。

ではなぜ、イラン政府はレザイアン氏の拘束を続けているのだろうか?

私は核合意はイランで不当に拘束されている米国人4人にとっては良い兆候だと確信している。そして、これにより、イラン政府が人質を取る戦術のインセンティブは将来薄れていくだろうとも考えている。

レザイアン氏が依然収監されている事実は、数十年間にわたる米国とイランとの悲惨な関係が終わってはいないことを示すように思う。イラン国内で対米関係の正常化を止めようと躍起になっている勢力が、同氏釈放を妨げているのだとしても不思議ではない。

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